「ダメな科学」を見分けるための大まかな指針」のポスター解説(4)推測表現 (おまけ:「科学的風だけど実は科学的証拠ではないもの」の例)

5.推測表現(難易度☆☆)

研究結果からの推測は、まさに、単なる推測でしかありません。「〜だろう」「〜かもしれない」「〜の可能性がある」等の言葉には警戒しましょう。このような表現が用いられている場合、研究によって、その結論の確かな証拠が得られているとは考えにくいからです。

対処法の例:「今わかっていること」と推測は分けて考える。科学では一つ一つのステップを踏んで証明していくが、報道や広告ではしばしば数段飛ばしの推測がなされていることを念頭に置いておく。




科学記事の例

昨今論文として発表されるような科学研究の成果というのは、専門外の者からはその意義がわかりにくいことが少なくありません。科学研究というのは、はるか遠いゴールに向けて、一歩ずつ、地道に進んでいくものです。一歩=一つの研究の結果と考えると、その歩幅-つまり、研究の進み方-はとても小さかったりします。一般のメディアで報道されるような研究成果はその中でも比較的大きなもの(または重要なもの)でしょう。それでも、多くの人が考えるより、一つの研究で明らかになることは少ないものです。かなり適当ですが、モデルとして、「疾患Aの治療薬ができるまでの研究」をイメージして、例を考えてみました。

[研究1(Aという疾患がある)]

[研究2(Aになる人には共通の遺伝子Bに変異がある)]

[研究3(遺伝子Bはある物質Cの代謝に関わっている)]

[研究4(Cは体内の特定の細胞Dに蓄積する)]

[研究5(培養細胞では、DにCが蓄積すると本来作られるはず物質Eが作りにくくなる)]

[研究6(Aを発症した人では細胞D内の物質Eが少ない)]

[研究7(Aを発症するモデルマウスを作り、物質Eを与えてもAは改善しなかった。物質Eは細胞Dに取り込まれる前に分解されていた)]

[研究8(物質Eを少し変化させた物質E'をモデルマウスに与えたところAに効果があった)]

[研究9(E'がヒトでも効果があるか、安全に使えるかの臨床試験)]

[研究の目的(疾患Aの治療薬の完成)]