Night of Wonder 夜の不思議の水族園@葛西臨海水族園


8/13-16に行われていた葛西臨海水族園Night of Wonder 夜の不思議の水族園というイベントに行ってきました。


最近流行の(?)動物園・水族館の夜間開館。いつもとは違う水族館た魚たちの顔が見られるのが魅力ですね。


エントランスのエスカレーターを降りると…

館内の照明が落とされ、水槽が幻想的に輝いております。



レクチャールームでは「ゆらりうむ」という、布とプロジェクターで幻想的なムードを作り出すコーナーが。子どもたちが楽しそうにしてました。
  
  

夜のマグロ


葛西臨海水族園の目玉のマグロ水槽。夜のスペシャルガイドがありました。

  • 手前の泡は昼間はない。これは、水槽内に空気を送り込むためのものだが、夜ぼーっとしているマグロが水槽のアクリル壁に激突しないための結界でもある。
  • マグロは生まれてから死ぬまで止まらず泳ぎ続ける。しかし、夜は動きがかなりゆったりになる。
  • マグロの卵は直径約1mm。この水槽にいるのは生後1〜5年の個体で、一番大きいやつで160cmくらい。重さ100kgくらい。天然のマグロは3mくらいになるやつもいる。
  • 体は大きいが、けっこう繊細。仲間のちょっとした動きやお客さんの足音に驚いてパニック状態(素早く泳ぎまわる)になることも。

実際、このスペシャルガイドの最中にも動きが急に素早くなることが何度かありました。ゆっくり泳いでいる時とくらべて、全員の動きが揃っているのがおもしろかったです。
  
 

夜のペンギン

ペンギンコーナーでもスペシャルガイドが。

↑右の方に解説スタッフの方がいるのが見えますでしょうか?


  • ペンギンは、朝〜夕方魚を捕るというサラリーマンのような生活。
  • 夜は基本的に餌を食べないけど、あえてコウナゴを与えてみます!

数匹が、投げ入れられたコウナゴ目がけてダイブしてくれました。

  • 二匹セットになっているのはつがいです。


スペシャルガイドはもうひとつ海鳥コーナーでもあったのですが、渋滞に巻き込まれたせいで参加できませんでした。残念。

夜の東京湾


「東京の海」のコーナーは、水槽の灯りが消されていて、ほんとに真っ暗。正直よく見えません!しかし上から水槽を覗いてみると、暗がりで泳ぎまわる小魚が。ちなみにこの水槽の後ろには本物の東京湾が広がっております。



↑タコがいるよ!わかるかな?



まぐろの資源問題についての壁新聞。熱心に目を通されている方々がいらっしゃいました。

そして…ビアガーデン

夜のヒトは、お酒を飲みます!レストランも8時まで営業、テラスとテントデッキにカリビアン・ビアガーデンがオープンしてました。

東京都内とは思えない、リゾート感。葛西臨海公園の森と観覧車、東京湾、ディズニー、ゲートブリッジが見渡せる素晴らしいロケーションです。

ここでもプロジェクターが活躍。


夜の水族園、スタッフの皆様、生物のみなさんはけっこうたいへんだったのではないかとお察ししますが、なかなかいいイベントでした。東京湾に隣接してある葛西のロケーションが存分に生かされていると感じました。キラキラな東京湾の夜景ですが、海の中ではこうやって魚たちが生活しているのですね。

おまけ


ハチクロ」の観覧車。


夕立のあと、虹が出てました。

「それってマジ?」な科学・健康情報を見るときのチェックリスト(科学をあんまり勉強したくない人向け)

こちらのポスターはかなり広く拡散していただいたようで、ありがたい限りです。その一方、「難しい」という声も頂いております。それはある意味、予想通りというか、このポスターが難しいというよりも、現代の科学研究の内容を理解するために必要な基礎知識が、一般的に考えられているよりも多いってことだと思います。基本的には、科学研究の中身を「ちゃんと」知りたければ、このポスターにある用語や内容は、きちんと理解できなければダメなんです。かと言って、みんながみんな、人生の限りある時間を割いて、そこまで勉強するなんてのは不可能だとは思います。ですから、「おち研」さんの、この三か条は、「勉強するのはちょっと無理、だけどできるだけ騙されたくない」人にとってとても有用だなと思いました。

【「それらしい嘘」に騙されないため気をつけるべき三箇条】
1:専門家に聞く
2:素人集団による多数決は禁止
3:「わからない」と言う人の意見を重視する

特に、「疑問は知り合いの中で一番詳しそうな人に聞いて下さい。餅は餅屋に。」これは、可能であるならばいちばんいいと思います。最近ではTwitterなんかで、バリバリ第一線の専門家に直接質問できちゃうことなんかもありますからね(もちろん、いきなり喧嘩腰で問い詰めたりするのはやめたほうがいいと思いますが)。


とは言え、いつも誰かに聞くことができるとは限らないし、いちいち聞くのも面倒だったり、本格的な勉強は無理でも、ありがちな騙しのパターンは知っておきたいなという方もいらっしゃると思います。。そこで、今回は科学・健康情報でよく「ごまかして書かれがち」なところについて、リスト化してみました(一部、前回のポスターと被っているものあり)。


↓↓クリックすると大きい画像が開きます。



印刷したい人用pdfファイル

  • 読み上げソフト用にテキストファイルがほしい方はtwitter @usausa1975までご連絡ください。
  • 画像はコピペ等で拡散していただいてもかまいませんが、かならず出典(この記事のURL)を明記願います。

このチェックリストはあくまで「気をつけたいポイント」を示したもので、これに抵触するから即アウトとかそういうものではありません。
以下、簡単な解説、参考とした記事などを紹介します。


1. そのタイトル、釣りや煽りじゃない?
「釣り」とは、誇張やウソを使って、人の気をひこうとすること。毎日記事が量産され、人を集めてナンボのウェブメディアでは釣りタイトルが横行しています。スポーツ新聞の見出しのようなものですね。新聞のネット記事でも、活字版のタイトルよりクリックを誘うような表現が使われていることもあります。扇情的なタイトル+URLのツイートを、リンク先を読まずにRTすると、誤情報を拡散してしまう恐れがあります。RTする前に、まず内容を確認しましょう。


2.根拠はある?
これは、ネットだけでなく、雑誌等でも気をつけたいことです。ネットならまず、「一次情報」(話の発端となった出どころ)を確認しましょう。出どころがよく分からない話は、創作の可能性もあります。ネットや雑誌の健康情報は、医療の知識のない人が、よく調べずに適当に書いていることも少なくありません。「出典ロンダリング」は、まとめブログなどの根拠の不確かな話を、海外の大衆ゴシップ紙が取り上げ、その記事が「海外でも報道されている」という「根拠」になってしまうことです。


3.英文=「ちゃんとした根拠」?
実は、米国は日本より反医療や陰謀論がさかんです。英語で書かれていると一見すごい難しくて賢い文章に見えますが、どっぷり陰謀論につかったサイトや反医療+サプリメントを商売にしている人が書いたものかも。URLのドメイン名(このブログだったら"ne"の部分)が「go」は政府系、「ac」は大学・専門学校、「int」は国際機関を表しますので、一つの目安になるかもしれません。

英語で書かれた「新聞」でも、英国の「ザ・サン」などは「タブロイド紙」と呼ばれ、大衆の好むゴシップを扱う新聞です。日本で言えばスポーツ新聞のような感じでしょうか。

 

4.複雑な問題を言い切ってない?
アトピー発達障害不妊症、自閉症うつ病etc. 近年、「増えている」と言われて色々研究されているけど、イマイチはっきり原因や予防法が分からなかったり、複雑な要因があって簡単な解決法が見つかっていないものがあります。こういったものに対して、同じように近年増加しているものや使われ始めたもの(例えば、スマホの利用、電子レンジ、牛乳、白砂糖、食品添加物、生理用品…、言ってしまえば自分がdisりたいもの)を持ってきて、「○○の原因は××だった」と言い切ってしまうことがあります。しかし、これらはたまたま同時期に増えたとか、その背景に共通の原因がある(例えば『近代化』)だけかもしれません。その場合、○○をやめても、××は予防できません。○○が自分の好きなものや便利なものだったら、やめ損ですし、○○をやめることで逆に健康に悪かったりしたら最悪です。さらに、「××の原因は○○!しかし、▲▲を使えば、大丈夫!」とマッチポンプな商売をしている人もいます。7番も参照。

また、この手の話によく出てくるがんについては

で調べていますが、その主な原因は高齢化であることが統計から明らかです。


5. 「分からないことが多い」=「なんでもあり」?
科学研究は、地道に一個一個石を積んで、城壁を築くようなもの。一つの研究で分かることには限界がありますが、異なる条件での実験・調査を繰り返して少しずつ「確かに言える」部分を増やしていきます。実は、「どこまで、どの程度わかっているといえるのか」は科学研究を進めるにおいて重要な点で、論文の初めの方には「今までの研究でこういうことがわかっている。しかしこれは分かっていない。そこで今回これを調べた」ということが書かれています。ところがたまに、「しかし、○○についてはよく分かっていなことも多い」の一言で、「ここまでにわかっていること」もすべてちゃぶ台返しできると考える人がいます。もちろん、新発見でそれまでの定説が覆されることもありますが、それにはよっぽどの証拠が必要ですし、それまでの一つ一つのデータの妥当性がそれでチャラになるわけではありません。

6. どんな立場で書かれてる?
製薬会社のCMやサイトを見るときには、明らかに宣伝なので、警戒する人も多いと思います。しかし、一見、「製薬会社の利権を告発する正義の人」のようで、代替医療のクリニックをやっていたり、反医療本、サプリメント等を売っている人もいます。書店では、売れている本の上位によく反医療本がランクインしています。また、常に主流に対して逆張りすることを仕事(?)にしている人もいます。さらに、標準医療や医療従事者に対して敵対心や憎しみを抱いている人もいます。事情は様々で、同情すべき点がある場合もありますが、極端にバイアスのかかった情報発信には警戒が必要です。


7.脅してない?
あるリスクを誇張し、「とにかくこれを避けなければ」と人を「慌てさせる」手法があります。慌てると判断力が低下して、行動を簡単にコントロールされてしまいます。そこで、「これを使っておけば安心ですよ」と言われると、飛びついてしまいますよね。また、ちゃんとした証拠がなくても、「これは怖いものだ」と何度も言われると、呪いのように作用して選択肢が狭められてしまい、もったいないし、社会全体としても損と言えます。


8.「白か黒か」になっちゃってない?
リスクも効果も「あるかないか」で考えると、非現実的な思考になってしまいます。世の中の多くのものが、「いい面」と「悪い面」の両方を持っているからです。これらを「どのくらいいいのか」「どのくらい悪いのか」という「量」を考えることで、「現実的に考えて、どっちが得か」を考えられるようになります。


9. 分母は?
「量」と同様、大切なのが、「割合」です。薬Aで、重篤な副作用が10人、薬Bでは100人出ました。では、薬Bのほうが10倍危険でしょうか?もし、薬Aを飲んだのは500人、薬Bを飲んだのは1万人だったらどうでしょう。Aでは10÷500=0.02、つまり飲んだ人の2%、Bでは100÷10000=0.01、つまり飲んだ人の1%で副作用がでたことになり、Aの方が副作用の出る割合は高くなるのです。


10. メリットだけ、デメリットだけを考えてない?
副作用の可能性を無視した薬のプロモーションも問題ですが、薬の本来の効果によるメリットを無視して「副作用がある=悪」のように扱うのも問題です。また、薬の性質のある一面のみに着目して「これはよい」「これはダメ」など、簡単に言い切っていまう情報にも注意。薬は、本質的に、「デメリット(副作用)もあるけれども、そのリスクを考えても、病気を放置するより薬を飲んだほうがメリットが大きい時に使う」ものです。どちらかだけに注目していいては、正しい判断はできないのです。


11. 「なんちゃって両論併記」してない?
「両論併記」というと、なんとなく公平そうに思えるのですが、実際には「専門家の99.9%がAだと考えている。Aだという証拠はこれまでにたくさんある」ということがらに対して、ごく一部(時には、数名の非専門家)の「私はBだと考える(特に根拠となる証拠はないが…)」という意見を「併記」することで、まるで50:50で信ぴょう性があるように見えてしまうことがあります。科学的なことがらについての意見は、証拠の確かさに基づいて重み付けしなければなりません。


12. 本当に「専門家」?
テレビや雑誌で「専門家」として語っている人にも、怪しげな人は少なくありません。医師免許は持っていても、病院で医師として働いたことがほとんどなく、独自理論の代替医療を行っていたり、○○ジャーナリストを名乗っていてもその分野のちゃんとした知識を持っていなかったり、研究者と言いながら、まともな論文をぜんぜん出していなかったり。「××アドバイザー」など、適当な「身分」を名乗って、まったく科学的裏付けのない独自の理論を「専門家」として語りまくる人までいます。また、何かの専門家であっても、その発言に常に学問的裏付けがあるとは限りません。自分の専門外のことについては適当な発言をしてしまう人もいます。メディアは、自分たちの考えたストーリーに「権威付け」してくる「専門家」を探していて、その人が信頼できるかどうかに無頓着なことがあります。こういった「自称専門家」の話よりも、身近にいる医療のプロ=かかりつけ医が、今の自分の状態を把握した上でしてくれるアドバイスのほうが、きっとためになると思います。また、極端なことを言って注目を浴びようとする「自称専門家」の意見には、ネット上などで「普通にその分野で働いているプロ」達が反発していて、その反論を見るとなるほどその通りだな、ということもあります。

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13.へんな「実験」「研究」してない?
サプリメントの紹介や美容記事、TV番組でよく見かける、「なんちゃって実験」。代表的なのは、「比較をしない実験」です。サプリメントAの効果を知りたければ、ある人がAを飲む前と後の比較では不十分で、Aを飲んだ人達と飲んでない人達(それ以外の食事や運動量は同じ)の比較をし、さらに統計的に評価する必要があります。そうでなければ、Aの効果なのか、偶然なのか、食事や運動の効果なのかがはっきりしないからです。また、Aを飲んで痩せた人だけをピックアップして(○○人中××人が痩せた!)とやってしまうこともあります。実はそれ以外に「Aを飲んだけど痩せなかった」人が痩せた人の何倍もいるかも知れません。別の例では、でんぷんを分解する酵素でどろどろの液(葛などのでんぷんによる粘り)がサラサラに→デンプンを分解するので健康にいい!という実験は、ビーカーの中で酵素がでんぷんを分解する作用があるとして、それが体内で同じように働くのか、さらに本当に健康にいいのかという、証明すべきステップをすっ飛ばしています。


14. その根拠は科学的?
「科学的に証明された」という言葉が使われることがありますが、本当に「科学的」な手続きを踏んでいるでしょうか?以下の記事が「科学的」な健康情報の見方を知るのに役立ちます。


15. 論文の信ぴょう性は?
薬や治療法についての研究に基づく根拠を「エビデンス」と言い、その研究手法の確かさによりレベル分けされています。エビデンスレベルが高いほど、信頼できる研究結果があると言えます。

また、論文は、後に不正が見つかった場合などに撤回されることがあります。例えば「MMRワクチンと自閉症に関連がある」とした論文は撤回されています。

撤回されなくても、いったん「こうかもしれない」という考えられたが、その後の研究でそれが否定された古い仮説だとか、現代の目で見ると研究手法に難のある論文というのもあります。インフルエンザワクチンの「前橋レポート」などがその例です。

↑「前橋レポート」を詳細に検討されています。
論文が一報出て、それで証明完了、というわけではなく、別々の研究でなんども「この現象は確かにある」と確かめられることで徐々に信ぴょう性が高まっていくのです。


最後に、怪しい科学・健康情報について、もっと知りたい方にはこの本をオススメしておきます。長年、この分野のブログを書かれてきたお医者さんの本で、分かりやすいです。

「ニセ医学」に騙されないために   危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!

「ニセ医学」に騙されないために 危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!



今回も、Twitter経由で多くの方にご助言頂きました。ありがとうございました!!

科学とニセ科学に興味がある人にオススメな海外ドラマ4つ

娯楽っぽい記事もたまにはいいかなーと。うさじまは海外ドラマけっこう好きです。日本のドラマは身近な感じが多いですが、海外ドラマはお金かかってるし、外国の日常生活が見られるのも面白いです。(古いけど)「プリズン・ブレイク」や「Glee」は誰が見ても楽しめる傑作なんですが、ここは本ブログらしく、科学やニセ科学に興味がある人が見たら面白いんじゃないかなーって作品を紹介してみます。


(注意)あくまで娯楽作品ですので、ちょっと科学的に変な/誇張された描写があっても、あまり気にせずに見ています。このへんの「気になる・気にならない」のツボは人によって違うので、合わなかったらゴメンナサイ!あと長寿人気番組は「今さら」でゴメンナサイ!夏休みの暇つぶしにでもどうぞ。

ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則」

今シーズン5までやってるけっこう長寿番組ですね。いわゆる「シットコム」です。主役は物理学博士のシェルドンとレナードのコンビ。二人はカリフォルニア工科大学の研究者でルームメイトです。シーズン1はその二人の部屋の隣に「金髪・巨乳・おバカ・リア充」な、女優志望のペニーが引っ越してくるところから始まります。シェルドンは、小学校から大学に飛び級したような超天才なんですが、超傲慢、コミュ障、潔癖症、エゴイスト、全人類に対してウエメセの、超イヤなヤツ。だけど、弱ると甘えてきたりするカワイイ面もあります。レナードは、賢くて、そこそこ人付き合いもいい、優しいけど不器用な理系男子です。シェルドンの理不尽にも耐えている!あと彼らの友達のラージ(素面で女性と話せないインド系。実家は大富豪)や、母親と同居しているマザコンで変態っぽいハワード(一人だけ博士号持ってなくてシェルドンに馬鹿にされまくり。マッシュルームカット)も出てきます。ギークネタ(遊ぶと言ったらゲーム、コミックストア、コスプレ)、非リア充ネタ、「工学系や生物系を見下す物理系*1(しかし実験やらせてみると全然できない)」「ニセ科学のトンデモ理論に失笑」などの理系ネタが、誇張されてとは言え、リアルでおもしろい!シリーズが進むと製薬会社勤務の高給取り、大学で脳の研究しているなどの、理系女子たちも出てきます。これもまたリアル。研究者クラスタと、勉強はできないがリア充コミュ力に富むペニーとの交流も、おもしろいです。ギーク/理系人間のダメな面をネタにしているところもあるけど、「あるあるネタ」のような感じで、愛があります。決して「理解不能な小難しいことをやっているキモい人達」なんて切り捨て方じゃない。多くの人がそうであるように、おおむね誠実、ちょっと不器用、たまに苛つきながらも友達思い、そして惚れっぽい(シェルドン以外)彼らです。副題に「恋愛法則」とあるように、けっこう恋愛ネタも多いです。相手の女の子は、リア充から、学会であった研究者だの、弁護士だの、バラエティに富んでます。ギークネタはアメコミやSFが多くてうさじまにはちょっとわかんないのが多いです(『クリンゴン語』とか、『ヘイロー・ナイト』とか、『グリーン・ランタン』とか…あ、マリオも出てきました)。ぜひ一度シェルドンにイラついてみてほしい!
  
  

ブレイキング・バッド

CSで今やってます。うさじまはまだシーズン1の途中までしか見てないんでどうなるかわかりませんが、シーズン5まであるそうです。シーズン1では、かつて有名研究所に務めていたらしい、今は冴えない高校の化学教師のウォルターが、末期がんを宣告され、家族に金を残そうと、高純度のメタンフェタミン覚せい剤)を合成する…ところから始まり、売人を殺したりいろいろ悪いことをしてしまいます。高校から持ちだした器具と試薬で覚せい剤を合成、ドラフトがないのでガスマスクをしてやるとか、殺そうとしてきた相手をとっさに神経毒ガス発生させて殺すとか、死体をフッ酸で(中略)のに、合成樹脂じゃなく陶器の容器を使ってしまい、容器ごと溶け(以下略)とか、けっこうエグいです。ちょっと無理がある!?ってところもあります。けど、スピーディーに展開するストーリーがおもしろいです。

 
 

「メンタリスト」

今シーズン5まで。これも長寿番組。CBI(カリフォルニア州捜査局)のコンサルタント、パトリック・ジェーンを主人公とした、基本一話完結の犯罪捜査モノ。なんですが、ジェーンはかつてコールドリーディングを駆使した霊感商売をやったり、手品師をやっていた人。で、レッド・ジョンというシリアルキラーにTV番組を通じて「挑戦」し、返り討ちにあって妻子を殺されてしまっている。そのトラウマと戦いながら、経験を生かして事件関係者の心理を読んだり操ったり時には催眠術も使ったりして事件を解決していきます。ニセ科学を利用して人を騙している人達が精通しているのは、科学というより人間の心理ですから、うさじまは人間心理を利用した詐欺なんかには大いに興味を持っています。本作には、騙す・騙される人間の心理や、人間の思い込みを利用したトリック(犯人によるものもあるが、主にジェーンによるもの)の描写が多く、面白いです。毎回出てくる事件の犯人や、レッド・ジョンとの騙し合い・出し抜きあいがスリリング。日本のドラマの「トリック」に通じるものがあるかも。カルト教団なんかも「敵」として出てきます。人の心理をたくみに操るジェーン本人も、レッド・ジョンによって妻子を殺されたトラウマや復讐心に支配され、人生をコントロールできていません。人間の弱さや悲しみ、そこにつけこむものの姿を描いたドラマとも言えますね。もう一つの特徴は、扱う犯罪がセレブがらみのものがやけに多いということ。大富豪が殺されて犯人はその愛人、みたいなの。豪邸やパーティーのシーンが出てきてゴージャスです。ちなみにジェーンも人を苛つかせる天才で、トラブル起こしまくります。常套手段は、事件関係者をわざと怒らせて反応を見たり、持ち物をすって相手をはめたり…あかんやん!でも、シェルドンよりはイラつきません。
  

 

マインド・ゲーム

これだけ動画が見つかりませんでした。双極性障害の心理学者の弟(クラーク)と元詐欺師の兄(ロス)とその同僚や元詐欺仲間らが、心理学を利用してクライアントの問題解決をする話。これも今CSで放映中です。まだDVDにはなってないみたい。これも「心理」をテーマとした作品です。そんなに都合よく操れるかな?ってとこもありますが、ドラマとしての誇張ならこれくらいはアリかな(心理学専門の方はお怒りになるかも)?。心理学の理論で「こういう場面で人はこう行動しがち」だから、そのシチュエーションを人工的に作ってやる、って感じでターゲットの行動を操ります。仲間で演技して作戦遂行するシーンはスリルがあります。双極性障害のクラークは一つのことを考えだすとそれしか考えられなくなって作戦をだいなしにしたり(ターゲットに「今こう動いてくれなきゃ困る!!と詰め寄ってしまったり…)、興奮して止められなくなったり、女子学生と恋愛関係になって大学をクビになったり(意外と双方本気の恋愛)、トラブルを起こしまくります。しかし、彼は心理学を悪用して人を操るようなことはしません。クライアントもターゲットも、自己の良心に基づいて行動できるように、誘導する。もちろん、倫理的に際どい感じの行動もあります。逆に、誘導よりも、彼のだだもれの「お願い」で人の心が動くことも。欲を言えば、用いてる心理学の理論の元ネタをもうちょっと詳しく教えてほしいかな?こちらでも、カルトにはまりかけている大学生を救う話があります。



好きな海外ドラマは、他にも、デンマークの連続殺人犯を追う女性刑事モノ「キリング」や、デンマークスウェーデンの共作でとっても変わり者の女性刑事とパイプカット手術受けたばかりのおっさん刑事のコンビが活躍する「ブリッジ」、グリム童話のグリムさんの末裔vsモンスター(普段は人の姿で生活している)の「グリム」、キリスト教系オカルトネタ満載(満載過ぎて荒俣宏先生の解説コーナーがないと意味不明)「スリーピー・ホロウ」など色々ありますが、テーマとずれてるので、今日はこのへんで。

*1:シェルドンは全人類を見下してますがね…

「ダメな科学」を見分けるための大まかな指針」のポスター

2014.6.26改定

ファイル名が「.JAPなのはヤバイ」というご指摘を受け、「.JP」に直しました。
元サイトの方がつけたファイル名ですが、色々な言語バージョンを作られているので、他意はないと思います。

2014.6.25改定

id:blueboyさんのアドバイスによりgoogle dropboxからもダウンロードできるようにしました(とりあえず)。
リンク間違ってるの直しました。



英国の教員などによる、化学に関するステキな「図」を作っているサイトCompound Interestの「A Rough Guide to Spotting Bad Science」のポスター日本語訳バージョンが完成しました!

「このポスター自体が難しすぎ」「これがわかる奴は騙されない」というご意見への返答は過去記事2に書いてありますのでよろしく!




元記事にある注意書き(大切!)

これは(『bad science』を)包括的に概観するものではありません。また、このリストのうちの一つに該当するからと言って、自動的にその研究は無視すべきものと言えるわけでもありません。このリストの目的は、単に、科学記事を読んだり、研究を評価する際に注意を払うべき点についての大まかな指針を提供することです。

Note that this is not a comprehensive overview, nor is it implied that the presence of one of the points noted automatically means that the research should be disregarded. This is merely intended to provide a rough guide to things to be alert to when either reading science articles or evaluating research.

自分で論文の原文を読んでみる、というのは、ある程度の訓練が必要です。自然科学系論文はたいてい英語で書かれていますしね。このポスターの6以降は、自分で論文を読む人向けかな、とも思いますが、「研究にも質の良し悪しがある」「どういう研究が『質が高い』」のか、知る手がかりにはなると思います。また、「自分の頭で考えたい」という方が、医学関係の情報を自分で解釈したい、という場合には、ここに書かれているようなことはよく理解しておく必要があるのではないかと思います。(逆に、このポスターに意味がわからない部分があるような場合には、素直に専門家の意見に従う方が吉、ではないでしょうか)。

クリエイティブ・コモンズに関する利用のガイドライン

このポスターはクリエイティブ・コモンズライセンス(Creative Commons Attribution-NonCommercial-NoDerivatives 4.0 International License.)で公開されています。…ってなんのこっちゃ?だったので調べてみました

著作権を保持したまま作品を自由に流通させることができ、受け手はライセンス条件の範囲内で再配布やリミックスなどをすることができ」る制度だそうです。


元サイトの利用のガイドラインより抜粋。

  • 以下の条件の元、web上で自由に再配布できます。
    • クレジット等を含め、改変しないこと。
    • 許可なく商用利用しないこと。
    • 再配布の際は、著作者を明確にすること。
  • 教育を目的として、自由にプリントアウトして掲示することができます。
  • 図の著作権はクリエイターAndy Brunning氏にあります(日本語訳のクレジットは「うさうさメモ」として頂きました)。

この訳文が気に入らない方は、また別に日本語訳バージョンを作っていただくといいと思いますが、その場合は著作権者の許可が必要です。元サイトの方に連絡してくださいませ。


というわけで、せっかく作ったので、広めてくださいね♡♡
解説記事等はまた後ほど書いていきたいと思います…


2014.6.26さらに追記

本エントリに関連して、素晴らしい記事を書いていただきました!!真逆の方向性の二つ。非常に意義深いと思います。

id:ublftboさんによる、専門用語を知らなくても読める「読み解き」です。このポスターが「難しい」と思われた方はぜひ。

id:zundamoon07さんによる、このポスターに書かれている「Bad Science」のような、「悪意の情報」を見破るための方法について論じた本のご紹介と解説です。このポスターから、「もっと知りたい」と思われたかたはぜひ。


今回、うさじまが批判があるであろうことは承知の上で(実際、試訳バージョンの段階でもさんざん言われました)、元ポスターの専門用語をそのまま専門用語として訳した理由について、過去記事にも書いていますが、改めて書いておきます。こちらにも書いたように、「翻訳版」としての位置づけや、今後いろいろ展開させる、というのもあります。それに加えて、「専門用語が表す概念を正しく理解するには、その用語の定義をちゃんと理解することが不可欠である」との思い、そして、「専門用語を用いて検索することで、ネット上の正しい情報にアクセスできる可能性がぐっと上がる」という自分の経験上の知恵があります。もともと、このポスターは、教員や大学院生のグループが作ったものですので、「お前らもっと勉強しろよ」的な立場であるのです。ですから、今回は、「ちゃんとした言葉で書かれた原典」にしたかったのです。

再度書きますが、このポスターはけして初心者向けではありません。しかし、こういった素材について、「初心者向け」しか存在価値がないか、というと、そうでもないんじゃないか?と思ってます。すべての人に有用なもの、はなかなか難しいです。色々あったほうがいい、くらいに気楽に考えていただけると嬉しいです。そして、このポスターを解説できる方は、ぜひ、誰かに解説することを試みてほしいです。そういうところから、「反・ダメ科学コミュニケーション」が始まったら、すごく価値のあることだと思います。そういう意味で、尊敬するお二方*1に、上の二つの記事を書いていただいたことは、まさに本望です。とても嬉しく思います。



Acknowledgments

I thank Compound Interest @compoundchem for permission to make translated version of the poster. I also deeply appreciate his/her generous support.
また、翻訳に際して多くの助言、訳例を提供していただいた皆様にも深く感謝します。

*1:id:ublftboさんはこのブログに初めてブコメツッコミ(しかも、「sample sizeの訳!」)を入れてくれた方として記憶に刻んでおります。

新薬開発までの成功率と期間-「○○のメカニズムが解明」されてからの話

基礎医学の発見を扱った報道の締めの言葉として、よく「新薬の開発につながる可能性がある」というフレーズが出てきます。難病や、現在治療法のない病気の場合には、当然、新薬が早く実用化されることが期待されます。しかし、その一方、薬には副作用がありますから、有効性と安全性についてしっかり確認する必要があり、その過程で、「ボツ」になる可能性もあります。では、上記のようなニュース記事から、実際に実用化されるまで、どれくらい待てばよいのでしょうか?また、開発成功率はどれくらい期待できるのでしょうか。一つの論文の試算を紹介します。

(タイトル訳:研究開発の生産性をいかにして向上させるか-製薬業界の大課題)


この論文は、製薬業界で研究開発コストが高騰してタイヘンなので、いかにして新薬開発の成功率を上げ、コストを下げるか、ということについて論じたものです。著者はイーライリリーの研究グループです。その中に、新薬開発の時間とコストのモデルがありました。


How to improve R&D productivity: the pharmaceutical industry's grand challenge, Steven M. Paul et. al., Nature Reviews Drug Discovery 9, 203-214 (March 2010) Figure2より改変(赤字の日本語を追記)

上記は、新薬開発のステップごとに、成功率(次のステップに進める確率)とコスト、期間等について試算したものです。元になったのは13の製薬大企業のデータとイーライリリーの内部データです。コストは百万ドル単位です(トータルのコストはなんと、約1800億円!)。このモデルは、まったく新しい薬(New Molecular Entity)を一から研究開発することを想定しています。


これを見る前に、新薬開発のステップについての知識が必要です。

上記のページに解説があります。ごく簡単にまとめると、目的の作用を持った物質を見つけ、薬としての望ましい性質をもつよう最適化する(基礎研究)→培養細胞や動物を用いて、安全性、毒性、代謝などを調べる(前臨床試験)→ヒトを対象とした臨床試験(治験)→承認申請および審査、と分けることができます。一般に前臨床試験までを「研究=Research」、ヒトを対象とした臨床試験以降を「開発=Development」と呼びます。上の図ではそれぞれ茶色と青で示されています。ここには、「薬のターゲットになりそうな生命現象を探す」部分は含まれていません。例えば、「Aウイルス感染症の治療薬」を想定すると、「ウイルスAは増殖時に酵素Eを発現する」という現象が見つかったとして、「酵素Eを阻害する物質が薬になりそうだ」と探し始めるところからがスタートとなります。


科学ニュース「Aウイルス増殖のメカニズムを解明!」から…

では、「Aウイルスの増殖には酵素Eの発現が必要であることが解明された」という架空のニュースから、「ウイルスA感染症治療薬」開発までの道のりを上記モデルに基づいて見てみましょう。上記モデルの「成功率」はステップごとなので、掛け算していく必要があります。

  • 酵素Eを阻害する物質が見つかって、新薬候補化合物として最適化される割合=51%。ここまでで4.5年。

(上記モデルの「Lead Optimization」まで…0.8x0.75x0.85=0.51)
なんと約1/2です。つまり、「○○のメカニズムが解明」されても、薬に使えそうな物質が見つかる確率は半々、ということになります(酵素Eを阻害する物質が見つかっても、例えば生体内の他の酵素も阻害しまくってしまうとか、水に全然溶けなくて薬として使えないなどで実用化できないこともあります)。

  • ヒトを対象とした臨床試験まで進める割合=35%。ここまでで5.5年。

新薬候補化合物を動物や培養細胞で試験して、薬効や毒性、薬物動態(吸収、分布、代謝、排泄)を調べます。生体内で薬効が示されなかったり、十分に吸収されないなどの問題や、毒性の問題があると、ここでアウトになってしまいます。

  • ヒトでの臨床試験をパスし、承認審査に合格して、販売される割合=4%。ここまで13.5年。臨床試験開始からは8年。

つまり、新薬開発をスタートさせたうち、成功するのは24.3個に1つしかないのです…。ちなみに、ヒト対象の臨床試験を始めるところからの成功率は約12%、8.6個に1つです。臨床試験でアウトになるのは、重篤な副作用が頻発した場合はもちろん、有効性を統計的に示せなかった場合などもあります。また、動物とヒトで薬物動態が異なり、思ったような薬効が得られなかったり、毒性が強く出るようなケースもあります。基礎研究を含めた全過程の中で最もボツになりやすいのが臨床試験のPhaseIIです(成功率34%)。ここは、薬を初めて患者さんに投与する段階となっています(PhaseIでは健康な人に投与します)。


もちろん、これは一つの試算、モデルですので、この数字が絶対というわけではありません。しかし、ニュース等で「××のメカニズムが解明。新薬に期待」というものがあったとしても、まだまだ道のりは長く、結局実用化できない可能性も高いということを念頭に置いておく必要はあるでしょう。


ちなみに、必要期間の計算は米国のデータですが、日本国内では「9〜17年」であると製薬協のHPには書かれています。また、研究開発のコストは国内では500億円程度のようです。


さらにちなみに、他の人たちが計算した同じ様なモデルについてはここの「Supplementary information S2 (box)」にあります。この論文の試算とそこまで差はありません。

実況・実験ノート

最近なにかと話題の「実験ノート」。実験をすることがある人には身近なものですが、そうでない方にはあまり馴染みのないものですね。うさじまも仕事でこういったノートを書くことがあります。今回、お料理を実験に見立てて実験ノートをつけてみることにしました。「ごちそうさん」でも、「料理は科学」と言っていましたしね。


なお、実験ノートの取り方については施設や研究室で色々なルールがあり、求められる厳密さもさまざまです。うさじまの場合、後に論文を書くとか、特許が…というより、「自分が再度実験するときのためのメモ」として書いている側面が大きくなっておりますので、「こんなの不十分だよ!!」と言われてしまうかもしれません。あくまで一つの例として寛大な心でご覧頂きますよう、お願いします。

 

実験ノートは誰にでも買えます

実験ノートと言っても、決まった書式があるわけではありません。が、改ざんや不正がしにくいように工夫されたノートがコクヨから売られています。今回は楽天で購入しました。研究所等のノートでも、これがベースになっているものは多いようです。(今回買ったのはエントリーモデルで、「本物」より一回り小さいA4型です)(2014.5.12訂正 ブコメより、このタイプはA4が標準だそうです。エントリーモデルはページ数が少ないそうです)
[:W300]
表紙です。



中には書き方や注意事項が載ってます。
 

パン作りの実験ノート

さて、今回は、ホームベーカリーで作る食パンにチーズをくるみを入れてみる「実験」をすることにしました。ベースのレシピはホームベーカリーの説明書についている「全粒粉パン」で、どれくらいのくるみやチーズを入れるべきか「先行文献調査」を行いました。「クックパッドで」チーズパン・くるみパンのレシピをそれぞれ調べて一斤にどれくらい入れるもんなのかざっと見てみました。今回は初めての実験であり、「まあとにかくやってみよう」という感じで、チーズは多めの80g、くるみは50gでやってみます。ホントの実験であれば、いくつか量をふって(異なる量を設定して)試したいところですが、ホームベーカリーが一つしかないので仕方ありません。

調べたこととそこから設定したこと(実験条件)を書きました。

実験しながら書いていきます


実際に使った材料と、測った重さを書いていきます。ロット間のバラツキがありそうな試薬…じゃなくて材料の場合はロット番号も書いておくこともあります。バターは温度による状態も重要かもしれないので、室温に戻してから入れたことをメモしておきます。パンケースにどうやって入れたかの図も簡単に(図がヘタですみません)。あと、このホームベーカリーは水を入れた上に小麦粉をいれていく(小麦粉が水に浮くはず)のですが、全粒粉を強力粉より先に入れたら沈んじゃったこともメモしておきます。やりながら書くとどうしても汚くなってしまいます(これを避けるため、いったん他のノートにメモしてから実験ノートにまとめる人もいます)。



ホームベーカリーにセット。気温は発酵に重要と先行文献(取説)にあるので気温もメモ。気温がやや高いかも…と思いながらも先に進めました。

 

実験には失敗がつきものです!

さて…焼き上がり(結果)です。

横から見ると…普通にできてるのですが…



真ん中がえらくへこんでしまいました…。上の写真、「焼き上がり後 …気温28℃」とあります。そう、この日、同じ部屋でえらく熱くなるPCを使っていたためか、どんどん気温が上がっていたのです。取説の失敗例に「真ん中が凹む 温度が高い(25℃以上になる場合は冷水を使用すること)」とあり、まさにそのパターンみたいです。


写真などを貼る場合には、日付とサインをノートと写真両方にかかるように書いて、あとから差し替えなどができないようにします。あと、余白ができてしまうばあいには×などを書いて、あとから追記できないようにします。また、パンのサイズがよくわかるように定規を一緒に撮影しておきます(この写真ちょっと切れちゃってて、ホントはよくないですね)。


焼きの失敗はあったものの、チーズとくるみの分量については食べてみて十分に思えました(これはちょっと曖昧な表現)。シュレッドチーズを使ったためチーズの粒はほとんどわかりませんでした。そのへんも改良の余地がありそうなので書いておきました。

 

次につなげる

このように色々な記録を残しておくと、「温度がわるかったのかな」とわかります(チーズやくるみの量を変えたパンを同時に焼いていれば、原因はさらに推測しやすかったと思います。)。もし次回、もっと低い気温のところでやってみて、それでも同じように失敗したら、また他のところに着目して条件を見直す必要があります(例えば、全粒粉を先に入れたことや、粉の種類、イーストの量、チーズがシュレッドチーズだったことなど、あとから見なおしてみて「これが原因かも」の候補は色々あります)。実験は、やっている途中や、数回やっただけでは、何が原因で成功/失敗したかわからないことがよくあります。だからこそ、細かい条件を記録していくことが大切です。また、時間が経ってから再度同じ実験をやることになった場合や、他人がこの結果を再現するためにも、条件の記録はとても大切です。もちろん、論文や特許を書くためにも。


科学報道などでは、実験の「結果」だけが重視されがちです。しかし、科学実験における「結果」は、あくまでもその実験を行った時の「条件」の元でのみ成り立つことが示されたものです。ですから、実験の条件を記録しておくことが重要だし、結果を見るときにはかならず条件を確認する必要があると思います。

「ダメな科学」を見分けるためのおおまかな指針-訳文できました

に予想以上のご意見、アドバイスをいただき、訳文を作成しました!皆様、ありがとうございました!

「ダメな科学」を見分けるためのおおまかな指針
 
1.扇情的な見出し
記事の見出しは往々にして、読者に「クリックしたい」「読みたい」と思わせるように作られています。研究結果が単純化されすぎているのはまだマシな方で、ひどい場合には、内容が誇張されていたり、歪められていたりします。


2.結果の曲解
意図的かどうかはともかく、ニュース記事では、「よくできた話」にするために、研究結果をねじ曲げたり、曲解したりしていることがあります。記事を鵜呑みにせず、できれば、研究内容の原典を読んでみましょう。


3. 利益相反
多くの企業が、研究や論文発表のために科学者を雇っています。そういった研究が必ずしも無効であるとはいえませんが、分析する際にはそのことを念頭に置く必要があります。また、個人的または金銭的な利益のために、研究内容が偽って伝えられることもあります。
 

4.相関関係と因果関係の混同
相関関係と因果関係を混同しないように注意しましょう。「二つの変数が相関関係ある」ことは、必ずしも「一方が他方の原因である」ことを示しません。地球温暖化1800年代から進行しており、同時に海賊の数も減少していますが、海賊不足は地球温暖化の原因ではありません。


5.推測表現
研究結果からの推測は、まさに、単なる推測でしかありません。「〜だろう」「〜かもしれない」「〜の可能性がある」等の言葉には警戒しましょう。このような表現が用いられている場合、その結論の確かな証拠が研究によって得られているとは考えにくいからです。


6.小さすぎるサンプルサイズ
試験では、サンプルサイズが小さくなるほど、得られる結果の信頼性が低くなります。サンプルサイズが小さくなるのを避けられない場合もありますが、そこから導き出された結論については、上記のことを念頭に置いて検討するべきです。サンプルサイズを大きくすることが可能なのにそれを避けている場合には、疑念を抱く理由になるかもしれません。


7.代表的でないサンプル
ヒトを対象とした試験において、研究者は、母集団を代表するような個人を抽出するように努めています。もしサンプルが母集団全体と異なるものであれば、試験の結論もたぶん異なってしまうでしょう。


8.対照群がない
臨床試験においては、試験の対象となる物質を投与した「実験群」と、投与しない「対照群」の結果を比較しなければなりません。また、実験群と対照群は、無作為に割り付けなければなりません。一般的な実験では、変数をすべて統制したものを対照実験とします。


9.盲検試験が行われていない
バイアスを排除するために、自分が実験群なのか対照群なのかを被験者に知らせてはいけません。二重盲検試験では、研究者でさえも、試験終了までは、どの被験者がどちらの群かを知りません。(注意)盲検試験が必ずしも実現可能、あるいは倫理的でないことがあります。


10.結果のいいとこ取り
データの中から、結論を支持するようなものを採用し、そうでないものを無視するやりかたです。すべての結果ではなく、選択した結果から結論を導いている研究論文は、「いいとこ取り」をしているかもしれません。


11.結果に再現性がない
結果は独立した研究によって再現されなければなりません。また、一般性を保証するためには、(可能な範囲で)様々な条件で確認されなければなりません。途方もない主張には、それ相応の証拠が求められます−つまり、1つの研究だけでは、まったく不十分です!


12.ジャーナルと引用数
主要なジャーナル(専門誌)に発表された研究は、査読の過程を経たものですが、それでもまだ不備がある可能性はありますから、このガイドラインに書かれている注意点を念頭に置いて評価しなければなりません。同様に、その研究の引用数が多いからといって、必ずしも高く評価されているとは言えないこともあります。

原文
A Rough Guide to Spotting Bad Science

 頂いたご意見にいくつかお答えしたいとおもいます。


タイトルについて

「Bad Science」の訳を「ニセ科学」としたところ、多くのご批判を頂きました。その後、twitter経由で、多くの方にBad Scienceの訳についてのアドバイスを頂きました。「Bad Science」という言葉については定訳と言える日本語がない(つまり、日本にはない概念)のようです。頂いた例の中から、あまり非難がましくなく、ちょっと情けない感じで「ダメな科学」を採用することにしました。

  
  

誰を対象としたポスターなのか。内容が専門的すぎて素人に理解できない。

元のサイトでは

The vast majority of people will get their science news from online news site articles, and rarely delve into the research that the article is based on. Personally, I think it’s therefore important that people are capable of spotting bad scientific methods, or realising when articles are being economical with the conclusions drawn from research, and that’s what this graphic aims to do.

と言っていて、一般の人々もここにあるようなことを理解するべきであると考えられているようです。


しかしこのガイドラインは、「まず元論文読みましょう」からのスタートであり(項目3以降は論文の突っ込みどころの見つけ方ですから)、実際のところ、そのレベルの情報収集は素人には難しいかもしれません。特に日本人には英語で書かれた元論文を読むのは英語圏の人よりずっと敷居が高いわけです。そういう意味で、このガイドラインは「エントリーレベル向け」ではないと思います(ただ、一言で「研究」「論文」と言っても、色々「程度」があるんだよ、ということを示すことはできるかも)。ポスターですからどうしても字数に限りがあるという事情もあります。


ですから、(1)このポスターを、「わかっているひと」が「わかっていないひと」に「気をつけるべきポイント」について解説することに利用できるかも (2)本ブログでも、このポスターの解説記事を作ります(例もできるだけ載せて)(3)もしかしたら解説勉強会ができるかも…(4)科学的研究、科学と報道について興味を持ち始めた人(ある程度素養があってさらに勉強する気がある人)にはかなり役立つと思う(5)もっとわかりやすいエントリーバージョンを作る(イラスト付きができればいいんですが…)って感じです。

 

専門用語連発で難しく読んでもらえない。

まず前提として、このポスターについては、元の英文を日本語訳したものを作成することをまず初めの目標としています。元のポスターと同じイラストとレイアウトの日本語版を作成するわけです。ですから、元のポスターで専門用語を用いて表現しているところは、できるだけそれに対する定訳と言えるような日本語をあてるように努めました。上の項目にも書きましたが「わかりやすいエントリー向けバージョン」は次の課題だと考えています。

  

「Sample size」の訳について

かつてうさじまもやらかした間違いですが、Sample sizeを「サンプル(標本)数」とすると誤解をまねきます。医薬翻訳関係の本には、「症例数」「被験者数」の訳もあります。しかしここでは臨床試験に限った話ではないと思います(疫学なども含まれる)ので、「サンプルサイズ」の訳にしました。「サンプルサイズ」と「標本サイズ」では、前者の方が多く使われているようですので前者にしました。


コメント欄は5月11日(日)まで開けておきます。気になる部分があればコメントお願いします。twitterでもOK!

 
 

謝辞

ブログにコメント下さった皆様、twitter経由でコメントくださった皆様、ブコメつけて下さった皆様、どうもありがとうございました。とくに祭谷一斗 @maturiya_ittoさん、maanyaN @maanyaさん、麺さん、id:dunceさんには翻訳に関する多くのアドバイスをいただき、勉強になりました。