実況・実験ノート
最近なにかと話題の「実験ノート」。実験をすることがある人には身近なものですが、そうでない方にはあまり馴染みのないものですね。うさじまも仕事でこういったノートを書くことがあります。今回、お料理を実験に見立てて実験ノートをつけてみることにしました。「ごちそうさん」でも、「料理は科学」と言っていましたしね。
なお、実験ノートの取り方については施設や研究室で色々なルールがあり、求められる厳密さもさまざまです。うさじまの場合、後に論文を書くとか、特許が…というより、「自分が再度実験するときのためのメモ」として書いている側面が大きくなっておりますので、「こんなの不十分だよ!!」と言われてしまうかもしれません。あくまで一つの例として寛大な心でご覧頂きますよう、お願いします。
実験ノートは誰にでも買えます
実験ノートと言っても、決まった書式があるわけではありません。が、改ざんや不正がしにくいように工夫されたノートがコクヨから売られています。今回は楽天で購入しました。研究所等のノートでも、これがベースになっているものは多いようです。(今回買ったのはエントリーモデルで、「本物」より一回り小さいA4型です)(2014.5.12訂正 ブコメより、このタイプはA4が標準だそうです。エントリーモデルはページ数が少ないそうです)
[:W300]
表紙です。
パン作りの実験ノート
さて、今回は、ホームベーカリーで作る食パンにチーズをくるみを入れてみる「実験」をすることにしました。ベースのレシピはホームベーカリーの説明書についている「全粒粉パン」で、どれくらいのくるみやチーズを入れるべきか「先行文献調査」を行いました。「クックパッドで」チーズパン・くるみパンのレシピをそれぞれ調べて一斤にどれくらい入れるもんなのかざっと見てみました。今回は初めての実験であり、「まあとにかくやってみよう」という感じで、チーズは多めの80g、くるみは50gでやってみます。ホントの実験であれば、いくつか量をふって(異なる量を設定して)試したいところですが、ホームベーカリーが一つしかないので仕方ありません。
調べたこととそこから設定したこと(実験条件)を書きました。
実験しながら書いていきます
実際に使った材料と、測った重さを書いていきます。ロット間のバラツキがありそうな試薬…じゃなくて材料の場合はロット番号も書いておくこともあります。バターは温度による状態も重要かもしれないので、室温に戻してから入れたことをメモしておきます。パンケースにどうやって入れたかの図も簡単に(図がヘタですみません)。あと、このホームベーカリーは水を入れた上に小麦粉をいれていく(小麦粉が水に浮くはず)のですが、全粒粉を強力粉より先に入れたら沈んじゃったこともメモしておきます。やりながら書くとどうしても汚くなってしまいます(これを避けるため、いったん他のノートにメモしてから実験ノートにまとめる人もいます)。
ホームベーカリーにセット。気温は発酵に重要と先行文献(取説)にあるので気温もメモ。気温がやや高いかも…と思いながらも先に進めました。
実験には失敗がつきものです!
さて…焼き上がり(結果)です。
横から見ると…普通にできてるのですが…
真ん中がえらくへこんでしまいました…。上の写真、「焼き上がり後 …気温28℃」とあります。そう、この日、同じ部屋でえらく熱くなるPCを使っていたためか、どんどん気温が上がっていたのです。取説の失敗例に「真ん中が凹む 温度が高い(25℃以上になる場合は冷水を使用すること)」とあり、まさにそのパターンみたいです。
写真などを貼る場合には、日付とサインをノートと写真両方にかかるように書いて、あとから差し替えなどができないようにします。あと、余白ができてしまうばあいには×などを書いて、あとから追記できないようにします。また、パンのサイズがよくわかるように定規を一緒に撮影しておきます(この写真ちょっと切れちゃってて、ホントはよくないですね)。
焼きの失敗はあったものの、チーズとくるみの分量については食べてみて十分に思えました(これはちょっと曖昧な表現)。シュレッドチーズを使ったためチーズの粒はほとんどわかりませんでした。そのへんも改良の余地がありそうなので書いておきました。
次につなげる
このように色々な記録を残しておくと、「温度がわるかったのかな」とわかります(チーズやくるみの量を変えたパンを同時に焼いていれば、原因はさらに推測しやすかったと思います。)。もし次回、もっと低い気温のところでやってみて、それでも同じように失敗したら、また他のところに着目して条件を見直す必要があります(例えば、全粒粉を先に入れたことや、粉の種類、イーストの量、チーズがシュレッドチーズだったことなど、あとから見なおしてみて「これが原因かも」の候補は色々あります)。実験は、やっている途中や、数回やっただけでは、何が原因で成功/失敗したかわからないことがよくあります。だからこそ、細かい条件を記録していくことが大切です。また、時間が経ってから再度同じ実験をやることになった場合や、他人がこの結果を再現するためにも、条件の記録はとても大切です。もちろん、論文や特許を書くためにも。
科学報道などでは、実験の「結果」だけが重視されがちです。しかし、科学実験における「結果」は、あくまでもその実験を行った時の「条件」の元でのみ成り立つことが示されたものです。ですから、実験の条件を記録しておくことが重要だし、結果を見るときにはかならず条件を確認する必要があると思います。