(未成年の)妊娠・中絶、資料編

こちらのまとめにPnagashi先生から頂いたコメント

こちらを見て気になりましたので、関連資料を探してみました。


以下のグラフと表は2つの統計資料から作成しました。


「人口動態統計(確定数)の概況」第4表から、母親の年齢階級ごとの出生数です。平成23年(2011年)、20歳未満の母からの出生数は13,000程度です。


「64 人工妊娠中絶件数,年齢階級・妊娠週数・事由別」から、2011年度の年齢階級別中絶数をグラフにしてみました。1年間の未成年の中絶は20,000件程度です。


縦軸の単位は「件」です。


次に、衛生行政報告例の「F07 人工妊娠中絶実施率(15〜49歳女子人口千対),年齢階級・年次別」から、女子人口1000人につき何人が人工妊娠中絶を行ったか、年次ごとの推移をグラフにしてみました。20歳未満の中絶実施率は、2001年をピークに低下しつつあるのがわかります。


最近20年の中絶実施率の表です。上のグラフと同じデータ。2011年では、20歳未満の中絶実施率は7.1人/1000人、20代前半ではその倍の14.1人/1000人となっています。ちょっと話がずれますが、1992年では、30代の中絶が多く、20代のほうが少なかったのですが、2011年では逆転しています。

表 人工妊娠中絶実施率(15〜49歳女子人口千対


衛生行政報告の中絶数と、人口動態統計の出生数を合わせて計算してみました。流産や死産は計算に入れず、(出生数)/(中絶数+出生数)で、妊娠のうちどれだけが出生に至っているかを簡単に計算してみました。

2000年と2011年の比較です。中絶実施率は20代、30代で高いのですが、十代の妊娠は、総数が少ないです。20歳未満の妊娠では、約6割が人工中絶に至っているようです。2000年と比較すると、2011年では、出生に至る割合が10ポイント近く増加していますね。


中絶時期について、年齢ごとの比較を見てみました。年齢階級ごとの中絶数を100として、%で表しています。衛生行政報告の「64 人工妊娠中絶件数,年齢階級・妊娠週数・事由別 」より。

年齢が上がるほど、妊娠初期に中絶しているようです。


12週以降は「中期中絶」と言い、出産する形での中絶になるため母体への負担も大きいものとなります。上記の資料を見ても圧倒的に11週までの中絶が多いです。同じデータから、12週以降の中絶の割合を年齢階級ごとに求めてみました。

20代以降では、12週以降の中絶は5%程度であるのに対し、15〜19歳では10%、15歳未満では20%となっています。妊娠に気づくのが遅れる、気づいても言い出せない、病院へ行けない、金銭的な問題などで、中絶の決断が遅れるのではないかと想像できます。


ここまでは、オフィシャルな統計資料のお話でしたが、補足資料として一般社団法人日本家族計画協会家族計画研究セ ンターが行ったアンケート調査の結果をご紹介しておきます。

この調査は、「層化二段無作為抽出法という調査手法を用い、平成 24 年 9 月 1 日現在満 16~49 歳の 男女個人 3,000 人を対象として行われました。調査は平成 24 年 9 月 13 日(木)~9 月 30 日(日) に実施。その結果、長期不在、転居、住居不明によって調査票を手渡すことができなかったもの を除く 2,687 人のうち有効回答数は 1,306 人(男性 610 名、女性 696 名)、48.6%でした。回答者 の平均年齢は男性 34.1 歳、女性 34.5 歳。(p.1)」だそうです。中絶に関する部分を抜粋して引用しておきます。元記事には表やグラフも掲載されています。また、性教育に関する意識調査の結果もあります。ぜひご覧下さい。

一方、本調査によれば、人工妊娠中 絶の手術を受けたことがある女性は 14.7%、このうち反復手術は 36.3%と いう結果でした。この傾向は、過去の 調査でも大きく変わることがなく、02 年 33.1%、04 年 29.6%、06 年 23.6%、 08 年 25.4%、10 年 35.6%となっていま す。
「最初の人工妊娠中絶手術を受けることを決めた理由」をみますと、男女ともに、「相手と結婚していないの で産めない」がトップ 30.2%(男性 28.1%、女性 31.4%)、「経済的な余裕 がない」19.5%(男性 26.3%、女性 15.7%)、「相手との将来を描けない」 9.4%(男性 7.0%、女性 10.8%)でした。 男女差が著しい項目は、「自分の仕 事・学業を中断したくない」が男女比 2.51 倍、「相手との将来を描けない」 1.54 倍、「相手のことが好きでない」 2.17 倍と女性が多く、「経済的な余裕がない」では 1.68 倍と男性が高くな っています。
また、「最初の人工妊娠中絶を受け る時の気持ち」を女性に聞くと、「胎児に対して申し訳ない気持ち」、「自分を責める気持ち」「人生において必要な選択である」と続くものの、中絶をリプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)と捉える気持ちがまだまだ薄いことがわかります。


第6回 男女の生活と意識に関する調査 結果(概要)」p.7より引用


また、避妊に関する調査も。

これまでにセックス(性交渉)をし たことのある男女(1,081 人)に、こ の1年間の避妊の状況を聞いたところ、 「いつも避妊している」と答えたのは 36.4%(男性 38.3%、女性 34.8%)、「避妊をしたり、しなかったりしている」 者は 18.7%(男性 18.2%、女性 19.1%)、 「避妊はしない」という者は 19.0%(男 性 19.2%、女性 18.8%)でした。このうち、「いつも避妊している」と「避妊したり、しなかったりしている」と回答 した者(594 人)に、主な避妊方法を 聞くと、男性用コンドーム 84.2%(男 性 88.1%、女性 80.6%)、腟外射精(性 交中絶)15.1%(男性 12.6%、17.4%)、オギノ式避妊法 4.2%(男性 3.1%、女性 5.2%)、経口避妊薬 (ピル・飲む避妊薬)3.7%(男性 3.8%、女性 3.5%)の順でした。
これを女性の年齢階級別に みても、避妊を男性に依存する 傾向は残念ながら変わってい ません。本来、避妊法選択とは、 避妊を必要とする者の年齢、性交頻度、妊娠を受容できるかど うか、子ども数、出産間隔、経 済力、家の広さ、パートナーの 避妊に対する理解と協力度な どを加味して決められるべき ものです。不妊手術(女性)が 40 歳以降の女性で行われ、子宮内避妊具も 35 歳から 44 歳で 使用されてはいますが、老いも 若きも「コンドーム」「腟外射精」の避妊法選択となっている のは残念なことではないでしょうか。


第6回 男女の生活と意識に関する調査 結果(概要)」p.9より引用、強調はうさじま

やはり非常に「コンドーム」への依存度が高い結果になっています。前回の記事で紹介したようにコンドームの避妊効果はピルと比べてかなり不確かなものです。まして、膣外射精は、避妊法とはいえません*1。「避妊は確実なピルで、性感染症の予防はコンドームで」…は残念ながら遠そうです。


この調査を元に、日本家族計画協会クリニック所長である北村先生が書かれたブログ記事もあります。
こちらには、「中絶経験なし」「中絶経験1回のみ」「繰り返す中絶経験あり」の3群に分けて分析することで、「中絶を繰り返す女性」の特徴について分析しています。

幼い頃の親子関係に問題があったことはさておいて、セックスを軽く考えているだけでなく、初めての性交が「町で声をかけたりして知り合った」の割合が高く、「愛していたから(セックスした)」の割合が低いこと、そのためか避妊にも無頓着な様子が窺えました。生活習慣にも問題を残しています。「タバコを習慣的に吸っているか」には、中絶を繰り返す経験「あり」群では50.0%、中絶経験「なし」群11.4%が「習慣的に吸っている」と回答。「一週間の飲酒量」を尋ねると、「飲まない」は中絶を繰り返す経験「あり」群が41.7%に対して中絶経験「なし」群が58.7%と少数となっています。


 これらの結果からは、異性とのコミュニケーションの在り方、セックスに伴うリスクだけでなく生活習慣病の予防など、本来であれば公教育の責任から義務教育年限までにしっかりと学んでおくことが大切であるのに、そのチャンスが奪われたために繰り返す中絶を余儀なくされているとしたら、看過できない由々しきことではないでしょうか。

元記事には分析結果のデータもありますのでぜひごらん下さい。