CDC(米国疾病予防管理センター)の子宮頸がんワクチンに関するFAQ

ブログの更新をかなりサボってしまいました。twitterはやっていたのですが、転居の準備と転居後のインターネットできない環境でなかなか落ち着いて調べ物ができずにいました。やっと多少落ち着いたのでまた更新していきます。



今回は、CDC(米国疾病予防管理センター)のサイト内のワクチン安全性のページから、子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)に関するFAQを翻訳してみました。日本でもしばしば疑問を持たれる内容だと思います。ただし、あくまで素人の訳ですので、参考程度にお願いします。誤訳等、お気づきの点がございましたら、ご指摘を頂けると非常にありがたいです。


元記事
Frequently Asked Questions about HPV Vaccine Safety, CDC (Page last updated: June 19, 2012)
[訳]HPVワクチンの安全性に関するよくある質問

米国内で使用できるヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン*1にはどのようなものがありますか?
2種類のHPVワクチンがFDAにより認可され、CDCにより推奨されています。それはサーバリックス(GlaxoSmithKline)とガーダシル(Merck)です*2


HPVワクチンによる既知の副反応にはどのようなものがありますか?
最も一般的な副反応は、接種部位(腕)の疼痛と発赤です。10人に1人に微熱(38℃未満)が見られます。30人に1人に接種部位のそう痒[かゆみ]が見られます。60人に1人に中等度の発熱(38℃以下〜39℃未満)が見られます。これらの症状は長びくことはなく、自然に治ります。


有害事象とはなんですか?
有害事象とは、ワクチン接種または服薬の後に起こる健康上の問題のことです。そのワクチン又は医薬品に関係している場合もあれば、無関係の場合もあります。たとえば、ある人がワクチン接種後に頭痛を起こす場合があります。これは、ワクチンが原因かもしれないし、他の原因によるかも知れません。


認可前に、HPVワクチンの安全性はどのように確認されたのですか?
HPVワクチンについては、認可前に臨床試験を実施し、安全性を確認しました。ガーダシルでは、29,000人を超える男女がこれらの臨床試験に参加しました。サーバリックスについては、世界中で30,000人以上の女性が参加する、いくつかの臨床試験が行われました。臨床試験の詳細な情報については、添付文書をご覧ください。
ガーダシルの添付文書(米国)
サーバリックスの添付文書(米国)


米国内では誰がワクチンの安全性を監視しているのですか?
米国中の医療提供者と共に、2つの政府機関、FDA(食品医薬品局及び疾病予防管理センター)及びCDC(疾病管理予防センター)がワクチンの安全性を監視しています。ワクチン製造業者も、製品が承認され上市された後にも、頻繁にワクチンの安全性を監視しています。


FDAとCDCは認可後どのようにワクチンの安全性を監視しているのですか?
米国内で認可を受け、使用されているワクチンの安全性は、3つのシステムにより監視されています。これらのシステムにより、ワクチンによる既知の副反応を監視する他に、臨床試験では見つからなかったまれな有害事象を発見することも可能です。

  • Vaccine Adverse Event Reporting System(ワクチン有害事象報告システム、VAERS)は、ワクチン接種後の健康上の問題(『有害事象』と呼ばれます)の報告を受理します。VAERS報告はインターネット、郵送、FAXにより受け付けています。 VAERS報告を行うのは、医師、保護者もしくは家族、ワクチン被接種者、又は製造業者です。報告は、ワクチン接種後、いつでも提出できます。つまり、ワクチン接種の数ヶ月、数年後に起こった健康上の問題も報告できるのです。報告はすべて、FDA及びCDCの訓練を受けたスタッフによりレビューされます。VAERSにより、ワクチンがその有害事象の原因であるかもしれない(副反応の可能性)ことを示す報告のパターンを見つけることができます。ただし、ワクチンがある有害事象の原因だと断定するのには利用できません。
  • Vaccine Safety Datalink(ワクチン安全性データリンク、VSD)は、CDCと、高度な電子診療録を持ついくつかのマネジドケア組織との共同事業です。VSDは、ワクチン接種後に起こりうるまれかつ重篤な有害事象に関する知識の格差に対処するのに役立ちます。VSDは、VAERSによって検知された健康上の事象に関して、あるワクチンがその有害事象の原因であるか否かを確定するのを助けるための詳細な調査に利用できます。
  • Clinical Immunization Safety Assessment (CISA) Network (予防接種の安全性評価に関する臨床ネットワーク、CISAネットワーク)は、CDCと、ワクチンにより引き起こされる可能性がある有害事象に関する研究を行っている米国内のいくつかのアカメディックメディカルセンターによるプロジェクトです。


これまでに報告された軽度から中等度の有害事象はどのようなものですか?
HPVワクチン接種後に報告された有害事象の大部分が軽度とみなされました。報告には、接種部位の疼痛と腫脹、発熱、めまい、悪心等がありました。また、「失神も報告されています。


失神は注射の後によく見られ、特にプレティーン(13歳未満の子ども)およびティーンではよく起こります。失神による転倒は、頭部外傷等の重傷を招く恐れがあります。怪我を避けるため、CDC及びFDAはワクチン接種後15分間は座るか横になることを推奨しています*3


これまでに報告された重篤な有害事象*はどのようなものですか?
筋力低下を起こすまれな疾患であるギラン・バレー症候群(GBS)が報告されています。現在のところ、ガーダシルがGBSの原因であるというエビデンスはありません。


ガーダシル接種後の血栓が報告されています。この血栓は心臓、肺及び下肢に見られました。ほとんど(90%超)は、喫煙、肥満、経口避妊薬(避妊ピル)服用など、血栓のリスクがある人でした。


VAERSにはいくつかの死亡例も報告されています。死亡報告はすべてCDCまたはFDAの医師によりレビューされています。死亡報告には、ワクチンが原因であることを示唆するパターンは見られていません。


重篤な有害事象の原因がワクチンであるかどうか、どのように見分けるのですか?
VAERSのスタッフは、ワクチン接種後に起こるさまざまな事象についての報告を受け取ります。これらの事象には、偶然ワクチン接種後に起こるものもあり、ワクチン接種が原因であるものもあります。VAERSのスタッフメンバーは個々の事例の詳細を検討すること、また報告に存在するパターンを探すことの訓練を受けています*4。そのようなパターンには、VSDのような他のデータを用いたさらなる検証を必要とするものもあります。


FDA及びCDCは、安全性監視情報に基づきHPVワクチン使用推奨について変更しましたか?
リスクのまったくないワクチンや薬は存在しません。CDC及びFDAサーバリックス及びガーダシルについての利用可能な安全性情報をすべてレビューしています。CDC及びFDAは、ガーダシルを6、11、16、18型HPVの予防に使用すること、またサーバリックスを16、18型HPVの予防に使用することは安全であると判断しています。


CDCは引き続き11及び12歳の女児に対し、子宮頸がん及び性器疣贅(性器のいぼ)の最も一般的な原因である型のHPVを予防するために、3回のワクチン接種を推奨しています。これらのワクチンはまた、13〜26歳の女性のうち、それまでにまったく接種を受けていない、又は2回以下しか接種を受けていない人に対しても、接種が推奨されています*5


加えて、ガーダシルは男性の性器疣贅も予防することができます。このワクチンは、9歳〜26歳の男児及び男性に対しても推奨されており、使用できます*6


FDAはガーダシルの添付文書について、接種後の失神による転倒の防止に関する情報を掲載するよう変更しました。CDCは医師及び看護師に対して、この件に関する同様の情報を認識させるための対策を講じています。


*有害事象のうち、以下のようなものは重篤であるとCode of Federal Regulations(連邦規則集)により定義されている。生命を脅かすもの、死に至るもの、長期的又は重大な障害/無能力に至るもの、先天奇形/異常を来たすもの、ならびに入院または入院期間の延長が必要になるもの。


最終更新 2012年6月19日

(注)原文「How do you know if a serious adverse event was caused by the vaccine?」の項がほぼ同内容で2回書かれていたので1回に省略してあります。


こういったFAQコーナーを厚生労働省のHPにも作って欲しいですね。とは言え、CDCでもFAQがあるのはワクチンの中でHPVワクチンだけのようなので、米国内でもこのワクチンが「問題になって」いるということかもしれません。

*1:日本では子宮頸がん予防ワクチン、一般的に子宮頸がんワクチンと呼ばれています。

*2:日本でもこの2種類が販売されています。

*3:日本では接種後30分間安静にすることを推奨しています。

*4:他の様々なワクチン接種後の有害事象報告とパターンを比較することで、そのワクチンで特異的に多い有害事象があるかどうかを見極める等の手法を使うようです。

*5:日本での推奨についてはかかりつけ医に相談してください

*6:日本での推奨についてはかかりつけ医に相談してください