日本国内の子宮頸がんにおけるHPV16/18型の割合

今日twitter でお話した方の疑問で、「国内ではHPV16/18型の割合が少ないから、16/18型対象としたワクチンは意味がないんじゃない?」というのがありました。ワクチンを接種してみて、集団として実際その病気が減るかどうか、これはやってみないとわからないことですが、「国内では16/18型の割合が低い」というが、どれくらい低いのか調べてみました。


資料はこちら。

3 HPV 遺伝子型の分布
ア)海外での分布
海外の子宮頸がん(25 カ国、3607 例)で検出される HPV 遺伝子型を、PCR 法で調べた症例対照研究 3)では、96%の検体で HPV DNA が検出され、HPV の検出頻度は上位から、HPV16、18、45、31、33、52、58、35、59、 56、39、51、73、68、66 であった。HPV16/HPV18 は全体の約 70%を占めた。


(イ)我が国での分布
我が国の子宮頸部細胞診正常女性(3249 例)と子宮頸がん患者(356 27例)を対象にした、PCR/シークエンシング法による HPV 遺伝子型の調査 20)では、HPV 陽性率は細胞診正常女性では 10.2%、子宮頸がん患者では87.4%であった。HPV 型別の頻度は、細胞診正常女性では上位から HPV52(12.0%)、HPV51(8.4%)、HPV35(8.1%)であり、子宮頸がん患者では上位から HPV16(42.4%)、HPV33(9.0%)、HPV58(8.0%)、HPV18(7.7%)、HPV52(7.1%)であった(図 12)。なお同グループの別の報告 21)では、CIN 患者での HPV 陽性率は 76.1%、HPV 型別の頻度は上位から HPV16(17.5%)、HPV52(15.0%)、HPV51(11.0%)、HPV31(6.3%)、HPV58(3.8%)であった。
PCR/制限酵素消化断片多型法を用いた報告 22)では、細胞診正常女性 24 (1517 例)、CIN 患者(CIN1:318 例、CIN2/3:307 例)、子宮頸部浸潤がん(140 例)を対象に HPV 型別頻度を調査し、HPV 陽性率は細胞診正常女性で 22.5%、CIN1 患者で 88.3%、CIN2/3 患者で 94.8%、浸潤がん患者で 93.4% であった。HPV 型別の頻度は、浸潤がんで上位から HPV16(40.5%)、HPV18(24.4%)、HPV52(8.4%)、HPV58(3.1%)、HPV33(3.1%)であった。
サザンブロッティング法を用いた子宮頸部扁平上皮がん(294 例)でのHPV 型調査 23)では、上位から HPV16(31.3%)、HPV58(10.9%)、HPV52(8.2%)、HPV31(2.7%)であった。この報告では子宮頸部腺がんが含まれていないため HPV18 の頻度が低い(0.1%)。
我が国の子宮頸がんで検出される HPV 型別分布は、報告ごとに成績が異なっている。現在の HPV ワクチンの対象となっている HPV16/HPV18 の割合には 50-70%の幅がある。PCR による核酸増幅過程を含む診断手技で信頼される成績を得るには、試薬や器具のバリデーションが不可欠であるが、これらの調査を行った大学施設等が診断ラボの基準を満たしていたかどうか不明である。
2006 年に WHO は、HPV 実験室診断法を標準化するためのラボラトリーネットワークを構築して、HPV タイピング方法の標準化を進めている。感度と特異性が明確な標準方法を用いることで、国際的に比較可能な HPV型別分布のデータが、今後得られることが期待される。


11-12ページより 強調は筆者

ということで、決定的なデータはないようですが、国内における子宮頸がんの50-70%がHPV16/18関連ということのようです。対して、海外では16/18型で70%とありますから、(直接比較するのは適切でないかも知れませんが)そんなに極端に低いということもないようです。

同資料によれば、HPVワクチンは対象とする型以外の予防効果は期待できなさそう(16ページ)ですから、ワクチンで予防可能なのは子宮頸がんのうち50-70%くらいと言えますね*1。これを低いと見るか、高いと見るかは、それぞれの判断になりますね。

*1:臨床試験の成績では、対象の型に対してはほぼ100%の予防効果があるようです。サーバリックス、ガーダシルの添付文書等参照