「HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)の嘘」の検証(2)HPVと子宮頸癌に直接の因果関係がないことをFDAは承知していた?

<2011. 11. 3追記>
検証の内容を、専門用語少なめでわかりやすくまとめたバージョンを作りました。
難しいのがイヤな方、概要を知りたい方はこちらをどうぞ。
「HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)の嘘」の検証をわかりやすく


「HPVワクチンの嘘」の検証2回目である。
前回に引き続き、特別レポート HPV(子宮頸癌)ワクチンの大インチキを暴くを検証する。


今回検証するのは、この記事の前半に書かれている、以下の内容。

FDAは、4年間、HPVは子宮頸癌の原因でないことを知っていた。

マイク・アダムスのレポートでは、以上の内容を証明するために、HiFi DNA Techという会社がFDAに提出した、医療機器のクラス見直し嘆願書及び、そこの引用されたFDAの文書を引用して説明している。
しかし結論から言えば、この嘆願書にも、そこに引用されたFDAの文書にも一言も「HPVは子宮頸がんの原因ではない」という内容は書かれていない


HiFi DNA Techの嘆願書は置いておいて、まずはFDAの文書の方から見てみよう。
当該文書は、上記サイトのリンクからは消えていたが、こちらで閲覧可能である。


マイク・アダムスのサイトの主張はこうである。

その中でFDAは、「HPVのDNA検査は、定期的なパップ(パパコロニー)・スクリーニングを代替するものとして意図されたものではない。通常の パップ・テストを受けた30歳未満の女性をスクリーニングすることを意図したものでもない。この集団でのHPV感染率は高いけれども、大半の感染は長続きせず、子宮頸癌と関連性がない」(強調は筆者)と述べている。


つまり、2003年の段階でFDAは、HPV感染が子宮頸癌と関連性がないことを知っていたのである。

これは、結論がものすごく飛躍している。


問題のFDA文書は、FDAがDigene社のHPV DNA検出キットの使用方法の拡大(パップテスト*1で異常があった女性が、さらに検査を受ける必要があるかないか判断するために使用→パップテストと併用して、30歳以上の女性のHPV感染のスクリーニングに使用)を承認したことを知らせるニュースレターである。


上記の部分は、承認したキットの使用目的について述べた部分で、子宮頸がんの原因について言及しているわけではない(そもそも、「ほとんどのHPV感染は自然に消失する」なんてことは、FDAどころか、HPVワクチンを製造しているグラクソ・スミスクライン社のHPVワクチンPRページにすら書かれている、現在ではごく一般的な知見である)。これは、このキットを子宮頸がんの標準的な検診として行われているパップテストのかわりとしてや、30歳未満の女性には使用しないということを言っているに過ぎない。


現に、同文書の2段落目には、承認するキットの説明としてこう書かれている。

HPVには100以上の型がある。本テスト、HC2 高リスク型HPV DNAテストは、メリーランド州ゲイザースバーグのDigene 社により製造され、13種類の子宮頸がん発生に関連する高リスク型HPVを確認できる。HPV DNAテストは、がんの検査ではなく、子宮頸部で細胞の変化を引き起こす可能性があるHPVのウイルス検査である。もし治療せず放置すれば、この変化は最終的にがんとなることがある。
FDA news 2003.3.31 P03-26

また、5、7段落目には以下のように記述されている。

性行動のある米国人のうち、 常時最大20%がHPVに感染していると考えられる。ウイルスに感染しても、ほとんどは除去され、健康に長期的影響をおよぼすことはない。しかし、少数の女性では持続感染し、やがて子宮頸部細胞に前がん病変を引き起こす。
同上

パップテストで正常であり、HPV感染のない女性では、子宮頸がんの発生するリスクは非常に少ない(0.2%)。パップテストで異常があり、HPVテストが陽性である女性が治療をしなかった場合には、子宮頸がんのリスクはより高くなる(6〜7%、またはそれ以上)。
同上

HPV感染と子宮頸がん発生の関連性について、はっきりと書かれている。
つまり、この文書では、HPVが子宮頸がんの原因となることは前提として、HPVのDNAを検出するキットについて、子宮頸がんの検査やスクリーニングにおいてどのような使用方法が認められるかについて述べているのである。
この文書をもって、「FDAはHPVが子宮頸がんの原因ではないと知っていた」と主張するのは無理がありすぎる。


さて、このマイク・アダムスの文書については、2回で検証するつもりだった。しかし長くなったのと、もう少し丁寧に調べたほうがいいと思ったので、HiFi DNA Techの嘆願書の内容については次回にまわすことにする。

*1:子宮頸がんの細胞診