WHOはインフルエンザワクチン接種を推奨している
2015.3.16追記
続報を書きました。
2015.1.26追記
元記事は現在「1月23日に掲載致しました本件記事につきまして、現在追加取材中につき一時的に非公開にしております」と記載され公開停止されています。しかしながら、いったん拡散された誤情報は転載等によりネット上でなんどもよみがえり、利用されることがあります。この記事はそのようなときのためにとりあえずは消しません。Business Journal により適切な訂正がなされることを願います。
インフルエンザの流行がピークを迎えています。そんな中、下記のような記事が公開されました。
- WHO、インフルエンザはワクチンで予防不可と結論 病院は巨額利益、接種しても感染多数, Business Journal, 2015.01.23(魚拓)
この記事には「世界保健機関(WHO)のホームページを見ても、『ワクチンで、インフルエンザ感染の予防はできない。また有効とするデータもない』と書いてあります。そもそも、インフルエンザはA香港型、Aソ連型、B型などと分類しますが、同じ型であってもウイルスは細かく変異を続けているため、ぴったりと当てはまる型のウイルスを事前につくり出すことは事実上不可能です」などの記述があり、「ワクチンを打つことの是非は意見が分かれるところだが、予防効果には多少疑問がある。それどころか、毎年ワクチンの副作用によって死者も出ている。惰性で接種するのではなく、熟慮の上で判断するようお勧めしたい。」と結んでいます。「熟慮の上」と言われても素人には判断が非常に難しいことですし、あのWHOが「感染予防はできない」と結論したなら、うたないほうがいいかな…なんて思っちゃいそうです。
では、WHOのインフルエンザに関するWebページではどう書かれているのでしょうか。ファクトシートの「予防」の項目をざっと訳してみました(なお、今回の訳はあくまでざっくりですので、細かい医学用語に間違いがあるかもしれません。あくまで参考にとどめてくださいますよう、おねがいします)。
- Influenza (Seasonal), Fact sheet N°211, March 2014
予防
インフルエンザおよび/またはそれによる重篤な転帰を防ぐのにもっとも有効な手段は予防接種である。安全で有効なワクチンが利用可能であり、60年以上前から使用されている。正常成人に対しては、インフルエンザワクチンは妥当な防御手段となるだろう。高齢者に対しては、インフルエンザワクチンの疾病予防効果は低くなる可能性があるが、重症度や、合併症発生率および死亡率を低下させるかもしれない。
予防接種は、重症インフルエンザ合併症に対して比較的ハイリスクな人、またハイリスクな人と生活を共にしている人や介護している人には、特に重要である。
WHOは以下の人に対して毎年予防接種することを推奨する。
- 妊娠のすべての段階にある妊婦
- 生後6ヶ月〜5歳の子ども
- 高齢者(65歳以上)
- 慢性疾患のある人
- 医療従事者
インフルエンザ予防接種は、広まっているウイルスがワクチンとよく一致している場合にもっとも有効である。インフルエンザウイルスは絶えず変化するため、WHO Global Influenza Surveillance and Response System (GISRS)(世界各地のNational Influenza Centresが連携している)が、ヒトの間で循環しているインフルエンザウイルスを監視している。
WHOは長年、ワクチンの成分についての推奨を半年ごとに更新してきた。これは、もっとも広まっている3つのウイルスの型(3価/2種類のA型ウイルスと1種類のB型ウイルス)を対象としている。2013-2014の北半球のインフルエンザシーズンの始まりと共に、従来の3価ワクチンに加え、B型ウイルスの第2の型を加えた4価ワクチンの成分についても推奨を開始している。4価のインフルエンザワクチンは、B型インフルエンザウイルスの感染に対して、より幅広い防御効果が期待される。
Prevention
The most effective way to prevent the disease and/or severe outcomes from the illness is vaccination. Safe and effective vaccines are available and have been used for more than 60 years. Among healthy adults, influenza vaccine can provide reasonable protection. However among the elderly, influenza vaccine may be less effective in preventing illness but may reduce severity of disease and incidence of complications and deaths.Vaccination is especially important for people at higher risk of serious influenza complications, and for people who live with or care for high risk individuals.
WHO recommends annual vaccination for:
- pregnant women at any stage of pregnancy
- children aged 6 months to 5 years
- elderly individuals (≥65 years of age)
- individuals with chronic medical conditions
- health-care workers.
Influenza vaccination is most effective when circulating viruses are well-matched with vaccine viruses. Influenza viruses are constantly changing, and the WHO Global Influenza Surveillance and Response System (GISRS) – a partnership of National Influenza Centres around the world –monitors the influenza viruses circulating in humans.
For many years WHO has updated its recommendation on vaccine composition biannually that targets the 3 (trivalent) most representative virus types in circulation (two subtypes of influenza A viruses and one B virus). Starting with the 2013-2014 northern hemisphere influenza season, quadrivalent vaccine composition has been recommended with a second influenza B virus in addition to the viruses in the conventional trivalent vaccines. Quadrivalent influenza vaccines are expected to provide wider protection against influenza B virus infections.
以上のようにWHOははっきりとインフルエンザワクチン接種を推奨しています。そもそも、文中にあるように、WHO自身が、ワクチンに使用すべき株の推奨を発表しているのです。
↑こちらから、ワクチンに使用する株のリコメンデーションを見ることができます。北半球と南半球で別になっていますね。
↑また、このようなキャンペーンもあります。
Global Action Plan for Influenza Vaccines (GAP)は、世界各国において、季節性のエピデミックおよびパンデミックに対する現在の世界的なインフルエンザワクチン不足を改善するための包括的戦略である。以下の3つを主要な取り組みとする。
- シーズンごとのワクチン使用を増加させる。
- ワクチン製造能力を拡大する。
- 研究開発
Global Action Plan for Influenza Vaccines (GAP) is a comprehensive strategy to reduce the present global shortage of influenza vaccines for seasonal epidemics and pandemic influenza in all countries of the world through three major approaches:
- Increase in seasonal vaccine use
- Increase in vaccine production capacity
- Research and development
元記事では「感染予防効果」にのみフォーカスしていますが、WHOのサイトにあるように「重症化や合併症の予防、死亡率を低下させる」ことにも大きな意味はあります。WHOの「結論」は、「ワクチンでインフルエンザは感染予防不可能」ではなく、「妊婦、高齢者、子ども、慢性疾患のある人、医療従事者は毎年予防接種することを勧める」です。毎回書いていますが、ネット上のワクチン情報はノイズがかなり多いですので、予防接種について迷ったら、かかりつけのお医者さんに相談することをおすすめします。