なぜ「レリゴー」はオリコンシングル年間ランキングに入ってないのか?

ここ数年、年末になると「オリコンシングル年間ベスト10がアイドルばっかり」という話題が盛り上がっている気がします。今年も、こんな記事をみかけました。


これらの記事の中で、「ジャニーズ系はiTunesで配信されてない」ということは記載されているのですが、じゃあ「アナ雪」は?と思いました。松たか子の「ありのままで」はiTunes年間ランキングは1位なのに、オリコンではトップ10入りしていません。

実は、この理由は単純で、「ありのままで」がシングルカットされていないからでした。松たか子の「ありのままで」も、英語版の「Let it go」も、CD音源はサントラ盤のみとなっています。MayJバージョンも、「配信限定シングル」として発売されています。で、サントラ盤ですが、オリコンアルバム年間チャートで2位、推定累積売上数は98万枚と、AKBと嵐に挟まれて健闘しています*1。というか、サントラでミリオンに迫る勢いというのはすごいのではないでしょうか。iTunesではアルバムの曲も一曲ずつダウンロードできて、それが年間トップセラーランキングに反映されるのです*2。だから、アナ雪の挿入歌「生まれてはじめて」もTop10入りしているのですね。

また、Pharrell WilliamsのHappy(iTunesランキング5位)ですが、こちらはどうやら基本的に配信のみでCDは輸入盤しかないみたいです。オリコンランキングは輸入盤も集計してるようですが、こういう曲は配信でよく売れるのは理解できます。そもそも話題になったのもYouTube発信ですからね。

昔、音楽の売れ行きがわかるデータはオリコンしかありませんでしたし、音楽は基本、CD・レコードショップで買うしかありませんでした。しかし、今ではいろいろなダウンロード販売が存在し、音源を手に入れるチャンネルも多様化しています。その中で「真のランキング」を決めることは非常に困難なのではないでしょうか。たとえば、上記の記事で「オリコンより納得感がある」と言われているiTunesランキングですが、ネットをするような人にとってはそうかも知れませんが、iTunesなんて存在も知らないような層もいるわけです。

あと、市場規模として、日本国内ではCDがダウンロード販売より圧倒的に大きいのです。

こちらは2013年のデータになりますが、CD販売が総額1,962億円に対して、ダウンロード販売はアルバム+シングルで295億円、着うた69億円となっています。iTunesはさらにその一部となります。

また、シングル発売されている曲でも、全てがiTunesにあるわけではありません。レコード会社の方針とか、アーティストのこだわりによって、CDでしか出してない人もいます。ジャニーズなんかはそうですが、上で引用した記事のタイトルは「ジャニーズがiTunesランキングに入ってない」ことを煽り気味に書いていてどうかと思います。オリコンランキングが日本で一番権威があるランキングとされているためにその「攻略法」が研究されてしまって、結果的に偏ったランキングになってしまっている面があるのは否めないとしても、「iTunesのほうが『真のランキング』を反映している」と簡単に言えませんよね(そもそも『真のランキング』って、なに?)

音楽の売れ行きだけでなく、さまざまな社会調査やアンケートの類でも同じことで、「どういう集団を対象に、どうデータを取ったか」で結果が全然違ってくるというのはごくアタリマエのことです。ランキングや「○○%の人が」と言った数値にされてしまうとそれがひとり歩きしてしまいがちです。「真のランキング」はこの世にないことを心に刻み、「どういうデータなのか」に留意しながら一つ一つのデータを見る・比較する癖をつけることが、この世の中で情報の波に溺れないための第一歩になるのではないでしょうか。


と、これだけで終わったら「うん知ってた」と言われそうなので、いろいろな音楽ランキングの年間Top10を比べてみたいと思います。

オリコンランキングはこちらからご覧ください。ちなみに、上位5曲が全部AKB48、あとは嵐2曲、EXILE TRIBE1曲、乃木坂2曲となっています。

iTunes

iTunes 年間トップセラー:ソング>
1位 レット・イット・ゴー〜ありのままで〜(日本語歌) 松たか子
2位 ひまわりの約束 秦基博
3位 ストーリー・オブ・マイ・ライフ ワン・ダイレクション
4位 レット・イット・ゴー イディナ・メンゼル
5位 ハッピー ファレル・ウィリアムス
6位 Darling 西野カナ
7位 ずっと feat.HAN-KUN & TEE SPICY CHOCOLATE
8位 春風 Rihwa
9位 RPG SEKAI NO OWARI
10位 生まれてはじめて(日本語歌) 神田沙也加, 松たか子

アナ雪が3曲。うさじまもカラオケ練習用に買いました。iTunesの特徴として、比較的洋楽が強いこと、ネット上で話題になったものが即座にダウンロードされて売れるという傾向があるように思います。あとはやはりiPhone利用者はiTunesから買うことが多いんじゃないでしょうか。


レコチョク

レコチョク ランキング(ダウンロードシングル)
1位「レット・イット・ゴー〜ありのままで〜(日本語歌)」 松たか子
2位「ずっと feat. HAN‐KUN & TEE」 SPICY CHOCOLATE
3位「レット・イット・ゴー〜ありのままで〜(エンドソング)」 May J.
4位「春風」 Rihwa
5位「レット・イット・ゴー」 イディナ・メンゼル
6位「Darling」 西野カナ
7位「喧嘩上等」 氣志團
8位「恋するフォーチュンクッキーAKB48
9位「RPGSEKAI NO OWARI
10位「TSUKI」 安室奈美恵

「着うた」があるのがいちばんの特徴ですが、スマホの普及で「着うた」市場は縮小しつつあるそうです*3。二位のSPICY CHOCOLATEは知りませんでした。iTunesでも年間7位に入ってました。レゲエアーティストだそうです。May.Jのレリゴーもランクイン。
ちなみに着うたのランキングは以下の通り。

着うた(R)ランキング
1位「レット・イット・ゴー〜ありのままで〜(日本語歌)」 松たか子
2位「ずっと feat. HAN‐KUN & TEE」 SPICY CHOCOLATE
3位「春風」 Rihwa
4位「喧嘩上等」 氣志團
5位「レット・イット・ゴー〜ありのままで〜(エンドソング)」 May J.
6位「TSUKI」 安室奈美恵
7位「Darling」 西野カナ
8位「レット・イット・ゴー」 イディナ・メンゼル
9位「We Don't Stop」 西野カナ
10位「ストーリー・オブ・マイ・ライフ」 ワン・ダイレクション

シングルランキングとあまり差がないですね。氣志團が健闘しています。

スペースシャワーTV(音楽専門チャンネル

SPACE SHOWER COUNTDOWN 20 2014年間 ランキング
1位 スノーマジックファンタジー SEKAI NO OWARI
2位 ray BUMP OF CHICKEN
3位 ヒカレ ゆず
4位 Mighty Long Fall ONE OK ROCK
5位 足音 Be Strong Mr.Children
6位 東京VICTORY サザンオールスターズ
7位 evils fall MAN WITH A MISSION
8位 グッドバイ サカナクション
9位 猟奇的なキスを私にして ゲスの極み乙女。
10位 Are We Special? The Shower Club

SUPER HITS PERFECT RANKING 100 2014年間 ランキング
1位 Bittersweet 嵐
2位 GUTS ! 嵐
3位 ラブラドール・レトリバー AKB48
4位 誰も知らない 嵐
5位 キング オブ 男!(Short Ver.) 関ジャニ∞
6位 AinoArika Hey!Say!JUMP
7位 言ったじゃないか(Short Ver.) 関ジャニ∞
8位 ひびき 関ジャニ∞
9位 前しか向かねえ AKB48
10位 ウィークエンダー Hey!Say!JUMP

スペシャはCSの音楽専門チャンネル。独自ランキング(SPACE SHOWER COUNTDOWN )と「CDセールスはもちろん、配信ランキングやカラオケランキング等」を考慮した「SUPER HITS PERFECT RANKING 」の二種類の集計をしています。いやあ、この差が面白いですね!スペシャチャートの10位はスペシャ25周年記念のスペシャルユニット。サカナクション、MWAM、ゲスの極み乙女などもいかにもスペシャっぽいラインナップ。セカオワは他のチャートと異なりスノーマジックファンタジーがランクイン。スーパー・ヒッツは見事にアイドル一色です。

TSUTAYA

TSUTAYA 年間ランキング レンタルシングル 2014
1位 GUTS ! 嵐
2位 ゲラゲラポーのうた 妖怪ウォッチ/キング・クリームソーダ
3位 Bittersweet 嵐
4位 Darling 西野カナ
5位 スノーマジックファンタジー SEKAI NO OWARI
6位 春風 Rihwa
7位 炎と森のカーニバル SEKAI NO OWARI
8位 ひまわりの約束   秦基博
9位 We Don’t Stop   西野カナ
10位 RPG    SEKAI NO OWARI

レンタルランキングはCDを売るための購入特典とは無縁で、ある意味純粋に曲を聞きたいという需要によるランキングとも言えます。さきほどのASCII.jpの記事によれば、CD購入に続く利用率だそうですので、「よく聴かれている曲」を知るにはこちらも無視できない存在でしょう。嵐はここでもつよい。妖怪ウォッチがランクイン。セカオワが3曲、西野カナ2曲入っております。

USEN

2014 年間 USEN HIT J-POPランキング
1位 レット・イット・ゴー〜ありのままで〜 松たか子
2位 ひまわりの約束 秦 基博
3位 にじいろ 絢香
4位 ラストシーン JUJU
5位 Darling 西野カナ
6位 春風 Rihwa
7位 心のプラカード AKB48
8位 東京VICTORY サザンオールスターズ
9位 ゲラゲラポーのうた キング・クリームソーダ
10位 日々 吉田山田

有線というと演歌に強いイメージですが、JPOPチャンネルもあります。ジャンル別なのでJ-POPランキングを。「にじいろ」は朝ドラの曲ですね。JUJU、吉田山田など他にはない顔ぶれも。嵐は入ってないですが、30位までにジャニーズがひとつもないので、ジャニーズはこのランキングにはカウントされてないようです。


Biillboad Japan

Billboard Japan Hot 100 Year
1位 嵐 「GUTS!」嵐
2位 AKB48 「心のプラカード
3位 AKB48 「ラブラドール・レトリバー
4位 嵐 「誰も知らない」
5位 嵐 「Bittersweet」
6位 ファレル・ウィリアムス 「ハッピー」
7位 松たか子「レット・イット・ゴー〜ありのままで〜」
8位 東方神起 「Time Works Wonders」
9位 秦基博ひまわりの約束
10位 ワン・ダイレクション「ストーリー・オブ・マイ・ライフ」

ビルボード・ジャパンの集計方法はオリコンとはかなり異なり、パッケージ・セールス、iTunes Japan 配信回数、AM/FM ラジオ・エアプレイ回数、 Twitter のツイート回数及び CD の Look Up 回数を合算しているそうです。*4。あとシングルカットされていなくてもカウントされるようです。言ってみれば独自に「真のランキング」を作成しようといろいろ試行錯誤している会社のようです。西野カナは11位、恋チュン12位。HAPPYはTwitterでずいぶんバズってたのでその影響も大きそうです。


そろそろ飽きてきましたね!これだけのチャートを見てみると、厳密な順位はともかく、「今年のヒット曲」「売れた曲」が見えてくる気がします。いろいろなランキングを比べながら、なんでここではこれが上位にきてるのかなーといろいろ考えてみるのは面白いです。あと、レンタルランキング、ビルボードランキングを見ても、嵐はやっぱり人気があるのでしょう。ジャニーズがまったくカウントされないチャートというのも、それはそれで偏っていると言えますね。

*1:2014年 年間アルバムランキング 1位〜25位, oricon

*2:同じ曲がシングル、アルバム、ベスト盤など異なる音源に収録されている場合に合算されているかどうかなどの詳細は見つけられなかったのですが、iTunes上では音源が違っても同じ曲は同じ曲として認識されるので多分合算されていると思います。

*3:日本は世界と逆行中!? 音楽配信サービスシェア早分かり, ASCII.jp

*4:Japan Hot100 に Twitter とグレースノート社のデータを合算 新たな視点を加えて国内唯一の総合楽曲チャートをリニューアル,プレスリリース