「薬のプロ」に聞く、「添付文書」との付き合い方

最近、薬の「添付文書」を引用して、「こんなに怖い薬なんだ!」と恐怖を煽るようなサイトを見かけることがあります。添付文書は薬の使い方や副作用について書かれた正式な書類ですから、そこにはウソはない(はず)です。そこに「こっそり」重要な恐ろしい話が書いてある。お医者さんや薬剤師さんはそんな添付文書の内容を知っていながら、いろんな薬を私たちに処方している。重大な副作用の可能性を知っていながら隠して、そんな恐ろしい薬を…?許せない話に思えますよね。では、実際のところどうなのでしょうか。添付文書に書かれていることを、わたしたちはどう受け止めれば良いのでしょうか。今回、「薬のプロ」である方お二人に話を伺うことができました。
 


<お話を伺った方>

  • 薬剤師Aさん:関西の薬屋さん。総合病院や大学病院の門前薬局でお勤め。最近は面薬局*1にも出没中。資料収集は趣味、だそう。
  • MR(医薬情報担当者)Bさん:外資系製薬会社の、アラフォーベテランMRさん。twitterでは@sagechin_MRのアカウントで情報発信なさっています。


薬剤師さんは、お医者さんからの処方箋を見て副作用や薬の相互作用(飲み合わせ)などをチェックしています。いわば、薬の情報を活用するプロ。一方MRは、主にお医者さんに薬の情報提供をするのが仕事。こちらは、薬の情報提供のプロと言えますね。お二人には、うさじまからメールで質問させていただき、回答していただいたことをまとめました。なお、本エントリの「添付文書」は、お医者さんで処方してもらう薬(医療用医薬品)の添付文書を指します。
   
 

添付文書って、なんのためにあるの?

日本製薬工業協会が、日本における薬に関する法規制や制度についてまとめた文書、「日本の薬事行政」を、Bさんにご紹介頂きました。

その第5章「医薬品の安全管理情報の提供・伝達」に、添付文書について書かれています。そこから引用します。

医薬品の製造販売業者が医薬関係者に医薬品情報を提供・伝達する媒体・手段の中で、最も基本的なものが医薬品の添付文書である。この添付文書は薬事法の規定に基づき医薬品の適用を受ける患者の安全を確保し、適正使用を図るために医師、歯科医師及び薬剤師に対して必要な情報を提供する目的で医薬品の製造販売業者が作成することが義務付けられている公的文書である。また、薬事法において、添付文書に記載しなければならない事項、記載するにあたっての留意事項、及び記載の禁止事項が規定されている。規定を逸脱したり、虚偽や誤解を招いたりする記載内容には薬事法にて罰則が定められている。さらに、具体的に添付文書の記載項目、記載順序及び記載要領並びに使用上の注意の記載要領については厚生労働省から行政通知として示されている。また、製造販売後安全確保業務により副作用情報等を収集し、評価の後、重要な内容については添付文書に逐次反映される。なお、添付文書は紙面及び情報の量に限度があることからこれを補完するため製造販売業者等においていくつかの情報媒体が作成されている。

ちょっとややこしく書いてありますが、要点は以下のとおりです。

  • 添付文書を作るのは製薬会社(=製造販売業者)。
  • 薬事法に基づく公的文書であり、ウソは書けない。何をどう記載するかは細かいルールが法律や通知で決められている。
  • 医師や薬剤師が読むことを目的としている。
  • 紙面に限りがある。

添付文書は、まず第一に薬の承認の範囲(臨床試験において、効果があることが確認され、どのような副作用が起こるかが把握されている薬の使い方)を示すものです。また、医師や薬剤師が臨床上必要とする重要な情報がまとめられています。そして、医療訴訟の際の重要な資料となるなど、法的な意味も持っています。


こちらもBさんに教えていただいた、「医薬品の添付文書とその情報」(浅田 和広, 日薬理誌, 140,24〜27(2012))によれば、添付文書の使用上の注意を守らなかった医師の過失が最高裁で認定されたり、また逆に添付文書で注意喚起が不十分であることがPL法上問題になったりするとあります。一方、日本製薬工業協会医薬品評価委員会PMS部会の作成した「作成の手引き」に、「原則として8 ポイント程度の活字を用いるなど見易くするよう配慮し,利便性を考慮して,A4 判4頁以内,左綴じ代として1.7 cm を確保する」といった規定があり(p.24)*2、正確さを求められながらも紙面に限りがあることがわかります。正確さと簡潔さを求められるという性質上、添付文書にはあまり詳細な説明は書かれておらず、これが一つの特徴となっています。

プロは添付文書をどう使う?

では、この添付文書、実際にはどう使われているのでしょうか。お二人に伺いました。


薬剤師Aさんの話(メールを元にうさじまが要約)

  • 実は、添付文書そのものはあまり使わない。
  • 薬剤師が使う「薬本」がある。「治療薬マニュアル」(医学書院)「今日の治療薬」(南江堂)など。お医者さんもこういった本を使っている。
  • Aさんが使っているのは「治療薬ハンドブック」(じほう)と「ポケット医薬品集」(白文社)の2冊。
  • こういった本には、添付文書に載っていない細かい情報や、同一成分で剤形が異なる薬の比較、薬学管理のポイントなどが一目で分かるように書かれている。
  • 「薬本」に載っていないようなことについては、添付文書とインタビューフォーム(IF)を見る(うさじま注:「インタビューフォーム」は添付文書に書ききれない詳しい試験データ等を掲載している文書です。スペースに限りがある添付文書の情報を補うために作成され、添付文書と同じように誰でも閲覧することができます)。主に、副作用と相互作用について、詳しく調べたいときや、薬物動態、薬効薬理を確認したいとき。また、「薬本」の記述について、確認したいとき。iPhoneの「添付文書Pro」というアプリやPCで閲覧する。
  • なぜまず「薬本」かというと、基本的に時間が勝負の薬屋さんで、患者さんからの質問に、すぐに&簡潔な答えが見つけられる可能性が高いから。実際、薬局で聞かれる疑問・質問にはほとんどがこれで十分。
  • 調剤・監査・投薬の一連の業務の流れで必要な資料は薬に関係するものだけじゃない。医師向けの内科系の病態とその処方に関して書いた本だったり看護師向けの患者ケアに関する本、検査値に関する本やあるいは専門誌なんかも参考にしている。また、雑誌(専門誌)もしょっちゅう購入して勉強する。すべて自腹!

実に様々な資料を活用されているのですね。インタビューフォームには、添付文書に書かれている内容が含まれ、さらに詳しい情報が記載されていますでの、そちらも利用されているようです。


一方、MRのBさんの場合は…
(Bさんのメールから引用)

(添付文書は)僕らが情報提供する際の根拠、原典になります。逆にいえばここに書いていないことは宣伝できません。

法的な側面がクローズアップされるようです。Bさんにご紹介頂いたブログから引用します。

<2>MRの役割と添付文書
添付文書は医薬品の適正な使用と普及を目的として行うMRの医薬品情報活動の基本となる情報源である。
●添付文書がすべての情報活動の原点であることを認識しなければならない。
●添付文書の改訂内容を速やかに医療関係者に提供し、医薬品の適正使用を図ることは、MRの重要な医薬情報活動の1つである。


添付文書の意義と役割, One ワン MR

 

お二人の話から伺えるのは、「薬の情報の原典」として添付文書が存在しているということです。

 

添付文書を読むのに必要なこと

上記のように、添付文書は法的な文書でもあり、限られた紙面に多くの情報を掲載しなければならないこと、医師・薬剤師が読むことが前提であることから、情報が凝縮された書き方をされていて、読む際には注意が必要です。お二人に、私たちが患者の立場で添付文書を読むのに必要なことは何かを尋ねてみました。


薬剤師Aさんの話(メールを要約・強調はうさじま)

  • 添付文書を読む上で気をつけるべきなのは、まず第一に用語をきっちり理解していること。わかりやすい例では「酵素」など。
  • あとは、「書いてある数字(確率等)」の読み方を理解していること。そうじゃないと振り回されて、結局にっちもさっちも行かなくなるのではないか。
  • テレビの健康情報番組などでは、たいていの情報が「アレはだめ、これは良い」の二者択一。そっちのほうが分かりやすいのだけど、人間の身体は複雑にできている以上は「ややこしい」のが当たり前と考えて欲しい
  • たまに思うのは「知ったかぶりはやめれ」ってこと。知ったかぶりであれこれイチャモンつけても、結局は単語の定義や数字が読めていないなら、イチャモンにすらならない。


MR・Bさんの話(メールを引用・強調はうさじま)

私自身は患者さんが添付文書を見ることはあまりお勧めできません。なぜなら書いてある副作用について理解できる方とそうでない方がいらっしゃるから。こんな副作用があるということを知るより、こういう症状が出たら医師に相談するように書いてある薬のしおりのほうをよく読むことの方が大切と思います。ただネット社会でみることができますから、見たい人は見るでしょう。それは止められないと思いますが、自分では正確に副作用は診断できないということは自覚していただかないといけないと思います。

Bさんからは、日経メディカルのメルマガに掲載された記事(薬剤師の方が書かれた文章)についても教えて頂きました。会員限定記事ですので引用は控えます。

こちらには、薬局で箱ごと薬を患者さんに渡す際(湿布など大量に処方されることがあるようです)、薬剤師が添付文書を抜いて渡す慣例について議論になっており、「患者さんが副作用を過度に心配して自己判断で薬をやめてしまう」「副作用の記載をみたとたん、そのような副作用が出ているように感じてしまう」と、医療関係者向けに書かれた文章を患者が適切に受け止められないことへの危惧から、添付文書を渡さないという薬局が多いようです。ただし、患者の知る権利を重視して、薬によっては添付文書を渡すというところもあるようです。


添付文書は、薬のことや、副作用について、専門的な知識を有してる人が読むことを前提に書かれているため、専門用語が多い、というより、ほとんどすべて専門用語で書かれていますし、内容も専門的です。「薬物動態」については、薬の吸収や代謝についての知識が、「臨床成績」については、薬の臨床試験のやり方や統計の知識がないと、書いてある意味を理解することは困難です。また、添付文書特有の表現もあります。たとえば、「重大な副作用」という言葉ひとつでも、「副作用等の重篤度分類基準」という通知により基準が設定されていますし(「添付文書の読み方」p.81)、よく誤解されている「劇薬」という言葉も、単純にイメージされるような「すごく恐ろしい薬」という意味ではなく、薬事法により定義されています


添付文書の副作用についての記述は、かなり不安をかきたてるものだと思います。Aさんの話にあるように、頻度についてどう捉えていいのかわからない、副作用の項目の示す正確な内容が理解できない(『ギラン・バレー症候群』などといった謎めいた病気や『重篤な肝障害(頻度不明)』などといった具体的な内容がわかりにくい記述)、自分がそれにあてはまるのかどうかわからない(診断できない)、といったこともその理由だと思います。また、重大な副作用については、海外の例(用法・用量が異なることがある)や類似の薬での例も記載されていることがあります(望月真弓著「改定 添付文書の読み方」(じほう)p.82)。


こういったことから、Bさんが勧めているのが次のサイトです。

このサイトの内容を印刷したものを薬局でもらえることもあるようです。


試しに、最近うさじまがダニに噛まれてあまりの痒みに病院に行った時にもらった「アレグラ」という薬について調べてみました。トップページで製品名のところに「アレグラ」と入れてみると、

こんなかんじで写真付きで出てきます。同じ成分でも剤形が違ったりすることがあるのは前述のAさんのお話にもありますので、写真がついているのはわかりやすくていいですね。名前をクリックすると詳細情報が出てきます。

どういう薬か(作用機序やどんなとき処方されるか)、用法・用量などが記載されています。副作用については、以下のように書かれています。

この薬を使ったあと気をつけていただくこと(副作用)
主な副作用として、頭痛、眠気、吐き気、喘息増悪、発疹、血管浮腫、かゆみ、蕁麻疹、潮紅、腹痛、めまい、倦怠感、胃腸炎などが報告されています。このような症状に気づいたら、担当の医師または薬剤師に相談してください。
まれに下記のような症状があらわれ、[ ]内に示した副作用の初期症状である可能性があります。
このような場合には、使用をやめて、すぐに医師の診療を受けてください。

  • 呼吸困難、血圧低下、意識消失、血管浮腫、胸痛、潮紅[ショック、アナフィラキシー]
  • 全身倦怠感、食欲不振、皮膚や白目が黄色くなる[肝機能障害、黄疸]
  • 発熱、咽頭痛[無顆粒球症、白血球減少、好中球減少]

以上の副作用はすべてを記載したものではありません。上記以外でも気になる症状が出た場合は、医師または薬剤師に相談してください。

これは、「どういう症状が出たら、どういう副作用の可能性があり、注意が必要か」がわかりやすい書き方だと思います。この「くすりのしおり」には、添付文書へのリンクもあります。そちらの副作用情報と比較してみましょう。


ここから、「くすりのしおり」にあるような、「皮膚や白目が黄色くなったら、肝臓がやられてる可能性があるから、すぐに医師の診断を受けなければならない」ということが、わかるでしょうか?その他の重大な副作用の兆候として何に気をつければいいかわかるでしょうか?相当な知識がなければ難しいですよね。添付文書を読むのに、「用語の正確な理解」が必要であることが理解できると思います。
  

薬の安全と副作用と添付文書

さて、ここで再び、初めの疑問に戻ります。「お医者さんや薬剤師さんは、添付文書の(恐ろしい)中身を知っていながら、患者にその薬を処方するのか?」…この答え、実は、「イエス」なんですよね。でも、お医者さんや薬剤師さんは、製薬会社の利益のために患者を陥れているわけではありません。薬というものは、本質的に、「デメリット(副作用)もあるけれども、そのリスクを考えても、病気を放置するより薬を飲んだほうがメリットが大きい時に使う」ものだからです。世の中なんでもそうですが、メリットだけがあって、デメリットのないものはありません。薬は、そのメリットとデメリットの大小の比較が素人には難しいし、間違った判断をすれば命に関わることもあるものです。しかし、逆に適切に使用すれば、命が助かったり、日常生活のクオリティがうんと上がったりするわけです。そういった薬のメリットとデメリットについてよく理解し、メリットをできるだけ大きく、デメリットをできるだけ小さく使っていくためにあるのが添付文書やインタビューフォームなのです。バランスこそが重要なところで、デメリットにばかり注目して「だから悪いモノだ」という情報には、価値がありません。添付文書は、デメリット(副作用)をよく知った上で、できるだけ回避する、軽くする、起こった時にすぐ対処する、それを行う専門家のための文書なのです。

そもそも、こっち側は医薬品にデメリット(副作用)が存在するのを承知の上で使っておる訳ですねん。それを服用・使用する患者にとって、その薬剤の持つメリットを生かし、デメリットをいかに少なくするかの「適正利用」を目的として読むのが添付文書(&薬本)であって、単に良し悪しのみ(しかも0/100)を判断するのに使う訳やありへんねん


(Aさんのメールより引用)

添付文書は前にも申しました通り医師向けの文書です。起きうることと起きたことを記載しています。
反医療のあおりのいけないところは、その解釈を間違っていることです。
たとえば(某サイト)に「パキシルの医薬品添付文書にはこの薬を服用することによる自殺企図発現率は6.4倍増加することは同剤に明記されており」とありますが、これはそういう対象の人にそういうことが起きてしまったから、気を付けてくださいという意味で記載されていることで、適応をよく考えて、と書いているに過ぎません。悪意のある解釈で、一般の人はわからないと思います。


(Bさんのメールより、サイトの具体的URLは伏せました)

お二人の話を合わせて読むと、薬のメリットとデメリットをよく考えて使うことが重要であること、そしてそのためにはたくさんの知識が必要であることがわかると思います。


薬は承認を得るための臨床試験において、統計的にメリット>デメリットであることが明らかになったものです。しかし、ある個人がその薬をのむことが、常にメリット>デメリットであるとは限りません。症状がどれくらい重篤か、薬がどれくらい効きそうか、副作用を起こしやすい要因があるかどうか、などによっても変わってきます。だからこそ、メリットとデメリットを知り尽くした専門家の判断が必要だし、専門家が判断するための資料として、添付文書等が必要なのです。添付文書を見て、「なんとなく不安になった」などの気分や、専門用語をよく理解しないままのイメージだけの理解で、自分や子供の健康(ときには命)に関わる判断をするというのは、大雑把すぎるのではないかと思います。まして、「これは劇薬です。こんなものを子供に飲ませるのですか」などといった、中身のあまりない恐ろしげなフレーズで脅そうとする人の言葉に耳を貸す必要があるでしょうか。薬は、人によって程度の差はあれ、多くの場合「できれば飲みたくないもの」でしょう。「この薬は危ないから飲まないほうがいい」という情報は、実は「それを聞きたかった」話かもしれません。でも、「その薬を飲まないこと」のほうが、さらに危険、ということもあるのです。不安に思ったときは、処方してくれたお医者さんや、薬剤師さんに質問する方が、ネットで不安情報を探すよりずっと役に立つと思います。
   
 

(おまけ情報1)添付文書のきまり文句

添付文書には「正確さが求められる」と書きました。当然、臨床試験で調べていないことについては「分かっていない」と書かざるをえません。それについては、以下のような指摘があります。

高齢者の項では「一般に高齢者では生理機能が低下しているので減量するなど注意すること.」,妊 婦・産婦・授乳婦等の項では「妊婦又は妊娠している 可能性のある婦人には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること.」,小児等の項では「小児等に対する安全性は確立していない(使 用経験がない)」などの画一的な記載も多く,情報の質・量,読みやすさの観点からも課題がある.


医薬品の添付文書とその情報」, p27

特に妊婦に関しては、薬が使えるのか使えないのかわからず困惑することも多いと思われます。以下のような、妊娠と薬に関する情報提供を行っている組織があります。専門の医師・薬剤師が相談に乗ってくれるそうです。持病があり、薬を飲み続けている方などにも役立つのではないでしょうか。

(おまけ情報2)薬の副作用はどうやって見つかるの*3

薬との因果関係を問わず、薬の服用後に起こった健康上の問題を「有害事象」といいいます。この有害事象が、薬の副作用だと分かれば(薬との因果関係が明らかになれば)添付文書が改定されるのですが、その流れをBさんに伺ってみました。

現場のMRとして勤務しておりますと、大体月に1,2回は有害事象に当たります。程度はさまざまです。
Dr「下地さんとこの**に○○って副作用ある?」
私「えーと、確かないと思いますが、、、、やはりないですね?なにか?」
Dr「いや、投与している患者さんに○○がでてね、ないんなら違うな、やはりいっしょに出してた++だな。++は××あるからね、ありがとう。」

このやり取りでも僕らは自社品関連の有害事象として報告します。(サーバの市販後の有害事象もあったことは報告されているのだと思います。因果関係の有無は関係なしに)

報告内容は患者さんの性別、年齢、投与開始日、終了日、有害事象名、患者さんの原疾患名、被疑薬、因果関係の有無、(不明は有りとする)その他の併用薬、転機、重篤度。(抜けてることもあるかも知れません。)
これらのことを聴取して本社の安全性管理部門に報告、そこが評価、集計し厚労省に報告します。副作用の既知、未知、重篤性によって色々な報告期限が設けられており、その為期限の前提となる情報入手日がとても大切で、有害事象は聴取したその日に報告するよう厳命されております。これは法規に(おそらく薬事法だったと思うんですが省令だったかもしれません)定められており、よく言われているような、MRが医者と結託して揉み消すようなことをすれば、その人は直ちに懲戒処分にされます。

報告された情報は本社が重篤性などを再度評価し、未知で重篤だったケースなど必要な場合は詳細調査という書類に症例の経過を記入していただくよう医師に依頼します。その後同様のケースの発生数や海外の状況、重篤性、類薬での発症の有無などより改定に至ります。


(Bさんのメールより引用)

こちらに、詳細があります。

 

(おまけ情報その3)劇薬・毒薬について

添付文書を使って危険だと煽る情報によく見られるのが、「劇薬」だから危険だ!というもの。薬事法の「毒薬・劇薬」の規定は、容器の表示、保管や管理、譲渡について定めたものとなっています。では、薬局ではどのように管理されているのでしょうか?Aさんに聞いてみました。

  • 「劇薬」は、特に鍵をかける必要はないので、赤いテープを貼った棚や引き出しにおいてあることが多い。


↑こんな感じ。

  • 「毒薬」は鍵のかかる引き出しに入れた上、入庫(メーカーからの納品)/出庫(処方箋による調剤)の記録をつける。


  • こういった記録管理は麻薬、覚せい剤原料、第1種向精神薬についてもおこなう。
  • たまに都道府県の薬務課から抜き打ちの監査があり、細かーーくチェックされるので、いつ来られてもOKなように、チェック&管理している。


(Aさんのメールよりうさじまが要約)

こういった管理方法は、薬事法第48条に則り、行われています。


では、患者さんに対して毒薬・劇薬を処方する時、なにか気をつけていることはあるのでしょうか。

  • 「毒薬」の場合はチェックする。ちゃんと適応症に適合しているか、記載の用量は間違いないか。患者本人に「なぜそのようなことを聞くのか」と聞かれたら、きっちり副作用リスクについて説明した上で改めて聞く。副作用報告が多く、メーカーが注意を喚起する文書をしょっちゅう配布しているような薬でも、医師が用法を間違えていることも。
  • 「劇薬」については、「劇薬」だから、注意するということはない。
  • 重要なのは、「劇薬」か普通薬かではなくて、作用機序や患者本人の体質・原疾患、相互作用。相互作用が多く、患者の併用薬のチェックが重要な薬(水虫の治療によく使う抗真菌薬「イトラコナゾール」)や、腎機能に応じて用量調節の必要な薬(ヘルペスの治療によく使う抗ウイルス薬「バルトレックス」)なども普通薬。でも、しいて言えば、投薬の時に副作用等をチェックしなければならない薬が多い(抗がん剤など)。
  • 「劇薬」より、向精神薬の方が注意している。向精神薬+劇薬のWコンボの場合は、処方時の用法用量をめっちゃ確認する。薬本を捲りまくって、5回くらい電卓叩くのは普通。

「劇薬」かどうかと、その薬が要注意かどうかとは関係ないようです。それよりもやはり薬それぞれに個別のリスクがあり、併用している薬や、身体の状態によるということです。こういった判断も、素人が添付文書を見たからといってできるものではないですね。


謝辞

Aさん、Bさんにはお忙しい中、非常に丁寧なご回答をいただきました。大変勉強になりました。どうもありがとうございました。また、お二人のような薬のプロが、たいへん誠実に、薬の適正使用に貢献されているということを、薬を使用する立場から、非常に心強く感じました。

*1:門前薬局と面薬局の違いについてはこちら参照。

*2:実際には4頁を超える添付文書もあるらしいです。

*3:国内の情報