健康情報と脅し
インターネットを含め、さまざまなメディアで提供されている「健康情報」。中には、根拠が薄かったり、ほとんどなかったりするものも多いです。そのような情報の中には、人々を脅かすことで行動を操りたい、またはセンセーショナリズムでアクセスを稼ぎたい、といったものも少なくありません。そういった記事で多用されるフレーズを集めてみました。なお、網羅的に調査したものではないため、うさじまの観察範囲によるバイアスがある場合があります。
「〜と言われています」「〜が指摘されています」「〜との声があります」
「責任転嫁の呪文」です。「誰かが言ってるんだもん、私が言ってるんじゃないもん、根拠なんか知らないよ、言ってる人に聞いてよね」というのと同義です。このフレーズとともに、根拠資料を提示してあればかなりマシなほうで、単に自分が思いついたことなんじゃないの、とツッコミたくなるような独自理論や、ごくごく一部の人が言っているだけ、なこともあります。そもそも、世の中を探せば、たいていのことは「言っている人はいる」のです。例えば、「この地球は宇宙人が作ったものだ」ということだって、言っている人はいます*1。しかし、そのような誰かが「言っている」だけの意見と、おおぜいの科学者が色々なことを調べた結果得られた証拠がたくさんある定説とでは、信ぴょう性がまったく異なりますよね。こういった信ぴょう性が異なるものを同等に扱う「なんちゃって両論併記」によって、専門家の間では問題視されていないような「危険性」を誇大に煽る記事はよく見られます。
「緊急」「今すぐ」
思考を停止させ、よく考えずに行動させようという呪文です。この言葉を見かけたら、逆に、立ち止まって、書いてあることをよくよく吟味してやろうくらいの心づもりが必要だと思います。
「可能性はゼロではない」
「科学的証拠はないけど、もし◯◯だったら大変だから用心するに越したことはない」
科学的な検証では、ある事象が100%起こらないと実証するのは困難なことが多いです。そのような場合に、「可能性はゼロではないから、いつ起こっても不思議はない」と著しく可能性の低いことの危険性を過剰に述べて、脅します。時には、「可能性はゼロではない」が「起きる可能性は五分五分」くらいのニュアンスで使われていたりします。実際には、専門家がこのフレーズを使う場合には、ある程度調べた結果、「可能性がゼロと言い切ることはできないが、実質的には無視できるほど小さい」という意味であることが多いのです。
参照
- 可能性はゼロではない Togetter
また、後者の「科学的証拠はないけど、もし◯◯だったら大変だから用心するに越したことはない」というフレーズも、一見もっともですが、このフレーズを使えばこの世のあらゆるものに対する恐怖心を掻き立てることができます。現時点でまったくその兆候がない健康被害について過剰に心配し、コストを掛けて回避する…もちろん、それで気持ちが落ち着くのならば(そのコストが大きすぎるものでなければ)、個人的にするなら悪くはないかもしれません。しかし、それがなにかモノを売りたいがための脅しであったり、誰かの勝手な空想にもとづくものであったとしたら、かなり無駄です。特に、社会全体でそのリスクを回避するための努力をするとなるt、コストも大きくなります。
安全のために掛けられるコストには、個人であれ社会であれ、限りがありますから、まず明らかになっているリスクに対処するのが先、ではないでしょうか。また、これらのあるかないかわからないほど小さかったりまれなリスクを避けるために努力をした結果、もっと大きな明らかなリスクを引き受けることになってしまわないよう、冷静な判断が必要です。
「人工」「合成」「化学物質」
…だから、毒ですと言ったフレーズ。たいていの場合「その点○○は天然なので安心」と続きます。実際には天然の毒物もたくさんあるし、人工的に合成されたものか、天然物かと毒性にはなんの関連もないことです。むしろ、何が入ってるかよくわからない天然物より、毒性研究がよくされた人工物のほうが、未知のリスクは少ないと言えます。また、これの変形で「人工のワクチン打つより自然に感染症に罹るほうがいい」なんて恐ろしいことをいう人もいます。リスクについては、あれだからいい、これだからダメと単純に分類することはできず、かならず実際のデータをもとに比較して考える必要があります。あれは白、これは黒…と単純化する情報は疑ってみるべきでしょう。
参照
- からだにやさしくない自然の情報メモ うさうさメモ
- 教えて!農薬Q&A 農薬工業会
- 「予防接種しないと何か問題か?」という親の質問 感染症診療の原則
よくわからない化合物名
「ソディウム・クロライド」という物質がありますが、この物質は色々な疾患のリスクに関連することが明らかになっているのに、現代日本の食品にたくさん含まれています。…というような文章を見かけることがあります。いかにもおどろおどろしいですね〜。逆「ジンクピリチオン効果*2」とでも言いましょうか。謎の名称を持つ「化学物質」はなんとなく怖いと思う人も多いようです。しかし、既知の物質にはほぼすべて化学物質名称がついけられています*3。化学の世界では、まざりものでない純粋な物質はすべて「化学物質」であり、化学物質としての呼び名が必要となるからです。知識があれば、名前からどういうものか推測できることも多いです。でも、見てもわからない人は「そういう名前なんだな」と思っておけばよいのであって、複雑な名前、怖そうな名前の物質だから怖いんだー!なんて脅しに乗る必要はありません。名前はただの名前です。ちなみにソディウム・クロライドは食塩、NaClのことです。よくわからないもののよくわからなさで脅そうとしている文章には注意が必要です。
「冷え」
「○○は身体を冷やす」とかです。「生理用ナプキンで子宮が冷えます」なんていうものもあります。「冷え」というのは東洋医学の概念だそうですが、非常に適当に便利に脅し言葉に使われています。現代の標準的な医学知識で言うと、ヒトの身体の熱は骨格筋や肝臓で作られ、血流によって全身に運ばれます(「体温調節のしくみ」)。体温は、自律神経により調節されて一定に保たれるようになっています。内蔵は、からだの中心部にあって、冷えにくいようになっていますね。一部の臓器だけ温度が低くなるというのは、よほどその臓器への血流が悪いというような特別な状況でなければ考えられないでしょう。また、手足が冷えやすい冷え性の人でも、内臓の温度(深部体温)は37℃前後に保たれていることがほとんどだそうです*4。平熱が低め(35度台など)という人もいるようですが、特定の食べ物が身体を冷やす、という話は根拠の怪しいものが多いので注意が必要です。ちなみに、深部体温が35℃以下だと医学的な「低体温症」ですが、これは遭難したり溺れたりして凍えているような状況のようです*5。「冷やす」というのは悪いイメージが広がりやすいし、素人には自分の内臓の温度を測定することができないですから、脅しに使うのにもってこいのようで、便利に使われています。
参照
- 温める食べ物と冷やす食べ物 とらねこ日誌
- くすりと健康の情報局 手足の冷え 第一三共
- 「冷え性」と「低体温」は何が違うの? All about
「どんどん蓄積する」
子宮などの特定の部位に蓄積する、なんてのもあります。PCBなど実際に蓄積性が高いものもありますが、そのような物質は、現在の化粧品や家庭用品では使用されません。蓄積関係のデマに「経皮毒」がありますが、これはなんの根拠もないものです。
参照
- 怪しい経皮毒 飛騨高山・怪しい情報ブログ
- 布ナプキンから広がるディープな世界。エコとダイオキシンと経皮毒 うさうさメモ
動物実験で毒性が…
「○○をラットに投与したところ××という症状が出ました」という話から、危険性を言うものです。食品添加物や農薬など、ヒトが摂取する(恐れのある)化学物質については、様々な動物実験が行われます。この時、実際の使用方法では絶対にあり得ないような大量投与を行います。急性毒性試験では動物が死ぬか死なないかの量を与えたり、皮膚刺激性の場合は原液を用います(主な有害性・安全性試験方法の概要 住化分析センター)。生物にとって、すべての物質は異物であると言え、どんなに「体に良い」ものでも、大量に投与すれば毒性が出ます。例えば、水も飲み過ぎれば死にます(多飲症・水中毒 ケアと治療の新機軸)。ですから、ほとんどの化学物質で「大量に投与すると動物に影響した」というデータはあるでしょう。例えば、酢にしても、主成分である酢酸についてはいろいろな毒性を示すデータがあります(MSDS 酢酸)。しかし、このような動物実験のデータを元に、無毒性量(摂取しても身体に影響がない量)が調べられ、種差(ヒトと実験動物の種による差)や個人差を考慮してその1/100がADI(毎日食べ続けても影響がない量)として設定され、それを超えないようにさまざまな基準値が設定されます*6。そして実際私たちが摂取している量としては、ほとんどの場合、この基準値を大幅に下回っているのです*7。つまり、「動物実験で毒性が出た」データは、あって当たり前で、問題は、量なのです*8。また、食品中にもともと含まれる物質には、食品添加物よりも毒性の強いものもあったりしますし、食品が微生物汚染(細菌・カビ)されることによるリスクと、食品添加物のリスクの比較など、総合的な判断が必要になります。あれは白・これは黒というわけかたはわかりやすいですが、現実を反映していません。
参照
- 科学の目で見る食品安全 p.4-5 食品の安全性について考えよう 食品安全性委員会
- キッズボックス 食品安全性委員会 (中学生に分かるように書いた食品安全性に関する様々な知識が掲載されています)
- スズメ8 @Hornet_B さんによる食品のリスクとコミュニケーションについて Togetter
- foocom 科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体
- 遺伝毒性発がん物質のリスク評価について 国立医薬品食品衛生研究所安全情報部 畝山智香子
- 畝山 智香子『ほんとうの「食の安全」を考える―ゼロリスクという幻想』 A puzzler on the trail
自閉症、発達障害、アトピー、子宮内膜症…
現時点で、原因がはっきり特定されていない疾患について、「○○が原因」と断定するもの。たいていが、根拠が非常に薄いか、過去に原因として疑われたものの、調べた結果関係ない(あるいは、ごく弱い関連しかない)と判明しているか、ひどい場合はなんの根拠もなかったりします。世界の研究者や医師が調べても原因をつかめないことを、簡単に断言してしまうような発言は疑うべきです。特に、「子供が○○なのは××のせいです」などと断言して、保護者の不安を煽るのは、悪質といえます。こういった原因がわからない疾患では、「なぜ、うちの子が…」という答えのない問いを抱えてしまうことになります。その答えを(たとえ自分のせいである、というものでも)与えてくれる(与えてしまう)ので、つい、信じたくなってしまう面もあると思います。困っている人につけ込む卑怯なやり方です。
妊娠・出産・子育て
妊娠・出産・子育てというのは非常に責任の重いものです。なんせ、人ひとりの命を預かり、この複雑な社会で自立して生きていけるよう導かなければならないのですから。そんなプレッシャーや、「子どものためになるならなんでもしてやりたい」とか「できるだけリスクを取り除いてやりたい」という親心につけこんで脅そうとする人たちがいます。妊娠・出産・子育て関連の怪しい話が多いのは、こういった脅しがあまりにも有効に働いてしまうからだと思います。
参照
- 意を決して書きます。舌小帯のこと ひだまりクリニック〜産んだ後にも母親学級〜
- 舌小帯を切ったことを後悔しているお母さんへ・・ ひだまりクリニック〜産んだ後にも母親学級〜
- 母乳をめぐる都市伝説 宋美玄のママライフ実況中継
「〜名が○○した」
分母のない情報です。副作用情報など。これが新聞等でもよくあるのが頭の痛いところです。実際、薬を服用するときに役立つのは「これまでに何人〜」ではなくて、服用した人何人中何人なのか、「頻度」です。0.01%の頻度で副作用を起こす2種類の薬があるとして、片方が5万人服用で5人、もう一方が100万人服用で100人に副作用が起こったとします。これを「副作用が5人に起こった薬と100人に起こった薬」として評価するのはおかしいですよね。さらに、薬の場合は服用によるメリットと副作用のデメリットの比較という観点も必要になります。
対症療法
薬は対症療法なので無意味・有害、という話。「すべての疾患は完治させることができるし、そうすべき」というのも一種の脅しだと思います。残念ながら、現在まだ完治させる方法が見つかっていない病気はあります。しかし、薬を適切に使うことで症状をコントロールし、QOLを保ちながら日常生活を送ることができる場合もあります。それを、「薬漬け」だとか「一生薬が必要になる」と脅し、「でもこちらの治療法なら完治させられますよ」と誘います。この言い方は逆に、「まだ完治する望みがあるかもしれない」という願望に応えるものでもあるのです。そして、薬を勝手にやめてしまって症状が悪化したり、「これで治るはずだ」とたいへんな努力をしてQOLが大幅に低下してしまう、その上無用な出費を迫られてしまうことがあります。アトピー・ビジネスなどはこの代表的なものだと思います。「リバウンド(依存性)が強く薬がやめられなくなり取り返しがつかないことになる」「今大丈夫でもいつかたいへんなことになる」など、今現在うまくコントロールできていてもダメだと思わせるフレーズも使われます。もちろん、薬には副作用がありますから、長期間使うにのに色々と注意が必要なものもあるでしょうし、依存性のある薬もあります。しかし、「治せないなら意味はない」と言うのは乱暴過ぎます。治療が難しい疾患こそ、主治医とよく相談して自分なりの対処法を探っていくことが必要だと思います。そんな局面で、薬という味方の助力を拒ませる脅し情報に振り回され、せっかくの戦力を無力化してしまうのはもったいないです。
参照
- アトピー治療でのステロイド使用をめぐる、とあるやりとり Togetter
添付文書やMSDS
最近よく見かけるのは、添付文書の一部を抜き出して「こんなに恐ろしいものだ」と脅す方法です。医療用医薬品の添付文書は、薬学や薬事法の知識のある、薬剤師さんなどが見ることを前提としており、限られた紙面に必要な情報を収めるために、独特の語句や言い回しが多用されています。提供される目的は、薬事法で承認されている範囲を明確にすることや、薬を使用する際の重要な情報(副作用に関する情報など)を専門家がひとめで分かるようにすることで、医療裁判でも重要な根拠として扱われますから、考えられるリスクをこれでもかと記載しています。それらはウソではないですが、受け止める側に適切な知識がなければ、ただただ字面のおどろおどろしさに怯えるだけになってしまいがちです(まして、恐ろしく感じるような一部を抜き出していれば尚更です)。例えば、薬事法上の「劇薬」指定であるから恐ろしいのだ、と言って怖がらせるサイトもありますが、文学等で用いられる「非常に恐ろしい薬」を意味する「劇薬」という言葉と、薬事法上の「劇薬」の定義は異なります。医薬品医療機器総合機構(PMDA)の医療用医薬品添付文書検索のリンクには、「専門家向けの情報ですので、自己判断はされないようお願いします。疑問が生じたら、まず、医師、薬剤師にご相談ください。」と書かれています。また、MSDSも、実験や製造の現場で試薬等を扱う人を対象に、使用上の注意を喚起するために書かれたものですので、どの物質に対しても「危険情報」が書かれており、慣れない人が見ると怖く感じる可能性があります。これらは、薬や化学物質を適切に取り扱うために作られた文書であり、書かれた内容、専門用語を正確に理解できない素人がなにかを判断するために用いるべきではないでしょう。PMDAのサイトにもあるとおり、このような文書を見て不安を感じた場合には、専門家に相談するべきです。
参照
- サーバリックスは劇薬って聞いたけど? cervarix@ウィキ
- 添付文書の読み方リチェッタ(薬剤師さん向けの情報ですが、添付文書がどのように活用されるものなのか知るためにはいいと思います)
- 添付文書の読み方−医薬品を正しく理解するために 日本薬剤師会学術大会ランチョンセミナー (同上)
- 日本では医師が毒薬を処方するので、患者は毒薬を飲まされている! 千日ブログ
- 薬事法施行規則別表第3 「毒薬」「劇薬」指定の一覧
英語の引用元
引用元が英文で書かれていると、「おー、論文だ」とか、「海外のニュースで報道されてる!」とか、なんとなく権威があるもののように思ってしまいがちです。しかし、英文だからってまともな文章だけとは限りません。実際、多くの陰謀論・危険論が、海外の陰謀論専門サイトや、薬や添加物の恐怖を煽ってサプリメントなどを販売するための団体のサイト等から翻訳され、日本に輸入されています。このようなサイトは、パッと見まるでなにかの研究所とか公的機関のように見えることもあります(組織名も、なんとかinstituteなど、もっともらしいものだったりします)。英文であっても、例えばFDA、WHOなどのような公的機関の最新情報(古い情報は、その後にまた新しい事実が明らかになっている場合があります)以外の出どころの怪しい文章はあまりあてにしないことです。
参照
- ワクチンに関するネット上の情報を「格付け」する6つの質問 うさうさメモ
「◯◯から作られている」
◯◯にはたいてい、「石油」や「昆虫の細胞」など、イメージの良くないものが入ります。これは単に悪いイメージを植え付けようとしているだけで、あまり有用な情報とはいえません。医薬品などでは、高度に精製されますから、何から作られようと、その作られたものの安全性試験と品質管理が十分になされていれば、その安全性と原料には特に関連性はありません。
動画
人を脅かすためには、文章より動画のほうが都合がいいです。おどろおどろしいBGMや怖い映像で、心理的に脅すことができますし、耳から聴いただけでは頭のなかにはなかなか細部まで残らず、何となく怖い印象だけが残り、後でキーワード検索して確認するにも手間がかかります。学生時代のことを思い出せば、ノートを取らずに授業で聞いた内容を後から正確に思い出すのはほぼ不可能ですよね。また、テレビで聞いた話をだれかに話そうとしたら、だいたい「あれ…ここのとこなんだっけ?思い出せないや」って部分がありますよね。動画を見ただけで細部まできちんと理解し記憶するのはほとんどの人にとって無理であるのに、強烈な印象は残りやすい。つまり、動画で情報を広めれば、細かい部分はよく理解・記憶させずに、印象だけを広めることができるのです*9。
脅しはわたしたちの願望を映しているのかも…
このような脅し情報は、実はわたしたちの願望を巧妙に反映しているように思います。たとえば、食品添加物や薬などは、その害とメリットを天秤にかけて使用の可否を判断しなければなりません。薬は、副作用があるとわかっていても、使わざるを得ないこともある。ワクチンも、もしかしたら重篤な副反応があるかもしれないけど、感染症のリスクと比較すれば接種したほうがいい…こういったことは、頭ではわかっていても、なかなか受け入れがたいものです。特に、自分の子どもに予防接種を受けさせて、なにかあったら…という不安は重いでしょう。「これは危険だから、全部なしにしたほうがいいですね」と言われたほうが気が楽かもしれません。「どちらのリスクを取るか」という葛藤は、とりあえずなくなりますから。また、原因不明の疾患や障害に対する漠然とした不安を持ちながら暮らすよりは「これが原因」と断言してもらって、それを避けてればいいと思えば楽になります。慢性疾患で一生薬と付き合う必要があるより、薬をやめて完治できる方法があるなら、それは喜ばしいことです。このように、脅し情報は、実はこうだったらなー(でも、そんなのありえないよね)という潜在的な望みを汲みとって、その裏返しとして表現されていることも多い気がします(あまりにストレートに願望を叶えるような情報は信じにくいけど、脅しとセットにすることで冷静な判断ができなくなりますからね)。わたしたちの不安と恐れと願望の間で揺れる気持ちをフルに刺激してくる、なんとも卑怯なやり方だと思います。
まとめのまとめ
脅し情報は…
- はっきりした事実を示すよりも、漠然とした怖いイメージを喚起する。
- 「悪者」をはっきり決める。
- わたしたちの不安な気持ちにつけ込む。
- 実際にはコントロール可能なリスクを、コントロール不能なものだと思わせる。
- 一刻も早く決断・行動しなければならないと思わせる。
- 情報をよく吟味し、じっくり考えるのを妨げようとする。
- 実は、潜在的に望んでいる情報が提供されることも…
- 脅しの後に、その解決策が提示され、誘導される。
脅しに乗らないために
このような脅しコミュニケーションをしようとする人々の目的は様々でしょうが、共通しているのは、恐怖や不安を掻き立てることで、わたしたちがゆっくり考えたり、その根拠の信ぴょう性を検証することなく、自分たちのいうことを聞かせようとするということだと思います。以下に挙げたのは、うさじまが健康情報を見るときに注意している点です。もちろん、これがすべてではありません。また、どんなに気をつけていても、こういった話法につけこまれてしまうことはあるのだと思います。弱ったときほど、そうなりがちだと思います。「ああ、こういう情報が欲しかったのかも…!」と思っても、一呼吸おいて、信頼出来る専門家の意見や、身近なかかりつけ医の話などに耳を貸すことが大切なのではないでしょうか。また、こういう脅しとともに提供されなければ考慮に値しないような情報や品物については、本当にそんなに価値があるものなのかどうか、じっくり考えた方がいいように思います。
- 「根拠はあるのだろうか?」と疑う。根拠が不明な場合は、信じず、「保留」しておく。
- 「緊急」「今すぐ」「取り返しの付かないことになります」という情報を見たら、とりあえず一歩引く。
- 罪悪感を煽るような言葉を見たら、一歩引く。
- 「善(安全)」「悪(危険)」の二元論ではなく、量の問題・頻度の問題と捉える。その量は、頻度は、私にとって、どれだけの影響があるのか?
- 自力でよくわからなければ、専門家に相談する。どこのだれだかよくわからない人、その道の専門家ではない人の言うことを鵜呑みにして重大な決定をしない。
*1:「地球は宇宙人が作った」でgoogle検索してみて下さい
*3:命名にはいろいろな方法があり、一つの化合物に複数の呼び方がある場合も多い。
*4:「冷え性」と「低体温」は何が違うの? All about
*6:酢酸の塩である酢酸ナトリウムについては、ADIは「制限なし」となっているようです
*7:ただし、医薬品については、身体に影響が出ない、ではなく、身体に何らかの作用があり、良い作用のほうが悪い作用より大きい、というものなので、専門家(医師や薬剤師)の指示にしたがって服用することが大切です
*8:ただし、遺伝毒性のある発がん性物質については閾値がないとして無毒性量は設定されていません
*9:そう考えると、テレビで言っていることを鵜呑みにするのは危険だなーとも思いっちゃいますね。