女性自身の「“危険すぎる副反応”の実態」という記事について

という記事がYahoo!ニュースにアップされています。ワクチンに反対の立場をとる医師の話を聞いているものです。以下抜粋。

現在、日本で承認されている子宮頸がんワクチンは、『ガーダシル』と『サーバリックス』のふたつ。アメリカのワクチン有害事象報告制度『VAERS』によると、『ガーダシル』『サーバリックス』の両ワクチンによる副反応被害者数は全世界で2万8千661人。死亡者数は130人にのぼっている。

「しかし、これは報告された件数だけ。実際にはこの10倍以上の被害者がいると予想されています。脳機能障害による意識低下で通知表のオールAだった少女の成績がガタ落ちしたり、月経のような出血、直腸からの出血も。なかには発熱、全身倦怠感などの症状が出だり、日本で難病に指定されているSLE(全身性エリテマトーデス)にかかり、寝たきりになった症例もあります」(佐藤院長)

上記には、大きな事実誤認があります。VAERSは米国有害事象報告制度で、ワクチンとの因果関係を問わず、接種後に健康上の問題が起きた場合にいつでも、医師・被接種者などが報告するという制度で、いち早くワクチンと因果関係のある副反応を察知するためのものです。VAERSデータベースに関しては以前本ブログで取り上げたことがあります。

VAERSデータベースのトップページにある注意書きを和訳したものを再掲しておきます。

VAERS症例報告情報を解釈するために

VAERSのデータを評価する際に重要なことは、報告された事象はどれも因果関係が証明されたものではないことに留意することです。ワクチンが有害事象に関与している可能性のある、あらゆる報告(副反応の可能性)がVAERSに提出されます。VAERSはワクチン接種後のあらゆる有害事象に関するデータを収集しており、その事象が偶然ワクチン接種と同時期に起きたのか、真にワクチンによるものかは問いません。VAERSに寄せられた有害事象の報告は、ワクチンがその有害事象の原因であることの証拠書類ではありません。


<原文>
When evaluating data from VAERS, it is important to note that for any reported event, no cause-and-effect relationship has been established. Reports of all possible associations between vaccines and adverse events (possible side effects) are filed in VAERS. Therefore, VAERS collects data on any adverse event following vaccination, be it coincidental or truly caused by a vaccine. The report of an adverse event to VAERS is not documentation that a vaccine caused the event.

また、別のエントリから、CDC(米国疾病予防管理センター)のワクチン安全性Q&Aの、VAERSに関する部分を抜粋します。

Vaccine Adverse Event Reporting System(ワクチン有害事象報告システム、VAERS)は、ワクチン接種後の健康上の問題(『有害事象』と呼ばれます)の報告を受理します。VAERS報告はインターネット、郵送、FAXにより受け付けています。 VAERS報告を行うのは、医師、保護者もしくは家族、ワクチン被接種者、又は製造業者です。報告は、ワクチン接種後、いつでも提出できます。つまり、ワクチン接種の数ヶ月、数年後に起こった健康上の問題も報告できるのです。報告はすべて、FDA及びCDCの訓練を受けたスタッフによりレビューされます。VAERSにより、ワクチンがその有害事象の原因であるかもしれない(副反応の可能性)ことを示す報告のパターンを見つけることができます。ただし、ワクチンがある有害事象の原因だと断定するのには利用できません。


原文はこちら
Frequently Asked Questions about HPV Vaccine Safety

以上のように、この記事は事実誤認に基づいています。


さらに続く「その10倍の数が…」云々についてはなんの証拠もない話です。誰も取りまとめてない、誰にも報告されていない数をどうやって知ったのでしょうか?この先生は、VAERS以上の情報網で、有害事象情報をまとめたんでしょうか?


記事後半には「厚生労働省はこの『サーバリックス』の国内での副反応の重篤症状を公開している。60ページ以上に及ぶ報告書には、09年12月に国内での販売が開始されてから’12年の8月末まで、のべ1千628件の副反応報告が綴られている。」との記述が見られますが、その元資料はこれだと思われます。

「のべ1628件」は、「製造販売業者からの報告」672例と「医療機関からの報告」956例の合計数なのですが、この表の下部には以下の様な注意書きがあります。

※ 製造販売業者からの副反応報告は、薬事法第77 条の4 の2 に基づき「重篤」と判断された症例について報告されたものである。なお、製造販売業者からの報告には、医療機関から報告された症例と重複している症例が含まれている可能性がある。また、その後の調査等によって、報告対象でないことが確認され、報告が取り下げられた症例が含まれる可能性がある。

また、次のページの医療機関からの報告のまとめの下には以下のような注意書きがあります。

今回の接種事業では、接種との因果関係の有無に関わらず、「接種後の死亡、臨床症状の重篤なもの、後遺症を残す可能性のあるもの」に該当すると判断されるものを報告対象としている。

つまり、医療機関と製造販売業者が重複して報告している数を足している上、ワクチン接種と因果関係がないと考えられるものも含まれいてるのが「1628」例、なのです。ちなみに厚生労働省の表ではこの合計数は記載されていません。重複があるため、合計しても意味がない数字だからです。上記の資料から、報告全体の表と医療機関によってワクチンとの因果関係ありと評価された報告数の表を引用しておきます。ただし、この報告は医療機関からのものに限られているためVAERSほど網羅していないと思われます。

報告全体



残念ながら、副反応のないワクチンはありません。接種するかどうかの判断に、副反応の起こる頻度は重要な情報となります。このような誤まった情報を、たとえ女性週刊誌と言えども大勢の人が読む雑誌に掲載する無責任さに呆れるばかりです。


子宮頸がんワクチンの接種の可否の判断について、こちらのまとめが参考になると思います。


また、子宮頸がんそのものについて、がん情報サービスのページです。年間どのくらいの人が罹患するのかや治療法など、いろいろな情報が掲載されています。科学的事実や統計に基づいてまとめられており、信頼出来る情報です。