「100均のシリコーンゴム製品から発がん性物質」で、どうなった?

これまでのお話

簡単に言いますと、2012年8月10日付朝日新聞で「100均商品から発がん物質 おしゃぶりやゴム製調理具」という記事が掲載されまして、その元となったのが豊島区消費生活センターの行ったテスト結果で、市販のシリコーンゴム製品から90℃でホルムアルデヒドの溶出が確認された、というものでした。しかしこの90℃での溶出というのが、食品衛生法に基く試験条件(60℃)よりも厳しいものであり、また新聞報道で「100均の」とあったのですが実際には100均以外の製品も含まれていた、という話でした。ここまでが1つ目のエントリーです。


そこでうさじまは以下の2点について豊島区に質問しました。

  1. ホルムアルデヒド溶出が陽性となった商品は「100均製品」に限るのか?
  2. ホルムアルデヒド溶出となった商品の使用温度は?

2つ目の質問について補足しますと、先程食品衛生法上の試験では溶出条件が60℃と書きましたが、実は「使用温度が100℃を超える場合は95℃」という規定があるのです。そして、豊島区の返事は「現時点ではっきりお答えできますのは、今回の試験に用いた材料は100円均一ショップ以外で買ったものも含まれている、ということのみです。平成24年3月で商品テスト室は廃止となり、当時実験に使った検体、記録などはすべて廃棄されております。誠に申しわけございませんが、今回のご質問にこれ以上お答えできません。」という衝撃的なものでした。さらに「厚生労働省より今回の実験について食品衛生法上に基づく再試験を行うよう指示されております。期日は未定ですが、結果が出次第、豊島区のホームページで発表する予定ですので、詳細はそれまでお待ちいただけないでしょうか。」とのことでした。ここまでが2つ目のエントリー。

豊島区の「再試験」結果とは

さて、この「再試験」の結果が豊島区消費生活センターのサイトに掲載されていました。その内容は以下になります。

シリコン製品に関する再調査結果について


 昨年度消費生活センターが実施した商品テスト(試買テスト)で、シリコン製品からホルムアルデヒドを検出したことについてお知らせしましたが、再度検査をするにあたり、既に使用した検体を廃棄処分していることから、食品衛生法に基づく確認検査ができませんでした。
 しかし、輸入・販売事業者を通じて、製品輸入時の「輸入食品等試験検査証明書」、「輸入食品等試験成績証明書」、事業者が自主的に検査した「合成樹脂製食品容器包装等に関する自主基準確認証明書」や「分析試験成績書」を調べたところ、当該シリコン製品はいずれも食品衛生法の規格に適合し安全性に問題がないことが確認できたので、お知らせいたします。
 このたびの商品テスト(試買テスト)の結果報告に関して、ご心配をおかけしましたことをお詫び申しあげます。 
豊島区消費生活センターHPより 更新日 平成24年9月3日

前回した質問の答えには「検体も記録も破棄した」とあったのですが、記録が出てきたようです。で、その記録に「食品衛生法に基く試験」の結果が掲載されていたので、それを再試験の結果とした、と。それはまあ、理解できるのですが(既に試験を行うための部署が廃止されているようですし)、うさじまの気になった「100均商品が特に危険といえるのか」「60℃溶出試験で合格だが実際は100℃以上で使用されている商品があるのか」については分からないままです。そこで、再度豊島区に質問メールを送ってみました。質問の内容は以下のとおりです。

  1. 最初の試験に用いた検体の品名、輸入業者、試験条件等は開示していただくことはできないのでしょうか。
  2. 1が難しいとして、検体の検査証明書等に記載されている溶出条件だけでも開示していただくことはできないでしょうか。

これに対して、豊島区からのお返事は

さて、お問い合わせの件ですが、ご希望の1,2とも公表することはできません。公表できますデータはホームページの試買テスト結果報告だけですので、ご了承ください。

ということで、結局こちらの試験については、何を測定したのか不明なままに終わってしまいました…。


ところで、豊島区からのお返事メールに、「なお、豊島区保健福祉部生活衛生課のホームページに「シリコン製品に関する検査の結果について」の記事が出ておりますので、参考までにご覧ください。」とありましたので、見に行ってみました。すると、今度は100均製品に限定しての検査を行ったようです。

食品に直接触れる容器や器具については、食品衛生法の規定に基づく規格が定められています。
 そこで、池袋保健所にて、食品衛生法に基づいた検査方法を用いて、100円ショップで販売されている同種のシリコン製品についての検査を行ったところ、ホルムアルデヒドは検出されませんでした。

として、ケーキ焼型、製氷皿、弁当用カップ、おしゃぶり等について食品衛生法上の問題がなかったことを報告しています。なお、試験方法については記載されておらず、実際試験を行ったのか、輸入関連書類の確認なのかはわかりません。


これらの経緯をまとめますと、以下のようになると思います。

  1. はじめの試験で「ホルムアルデヒドが溶出した」と報じられた商品は、100均製品も含め、食品衛生法上の問題はなかった。
  2. ただし、食品衛生法の定める測定温度は60℃であり、それ以上の温度ではホルムアルデヒドが溶出することもありうる*1
  3. その場合でも、熱湯につけて放置するという方法で煮沸を行えば、ホルムアルデヒドの溶出はほぼなくなると考えられる*2
  4. 微量のホルムアルデヒドの経口毒性についてはよく分かっていないが、明確な発がん性は示されていない*3


結局、はじめのエントリーからあまり情報量としては増えてないのですが、「気持ち悪ければ煮沸して使う」くらいの対応が妥当かな、と個人的には思いました。