からだにやさしくない自然の情報メモ
本当の意味での「自然農法」は存在しない
アグリサイエンティストが行く
こちらの記事を読んで思い出したのが、以前なにかで読んだ、「農業の歴史は、人が命がけで、食べられる植物を探し、長い年月を掛けて改良を重ねてきた歴史である」というような文章です。「命がけで」というのは、食べなきゃ死んじゃう、でもそのへんの植物を適当に食べたら毒で死んじゃう、というような状況。つまり、実はそのへんの植物には毒を持つものがいっぱいあって、食べられる農作物というものが特殊な植物なんだ、という認識です。奴ら(植物)だって、自分の子孫(遺伝子)を残したい、自分は動けないから誰かに種や花粉を運んでもらいたいけど、葉っぱを全部食べられちゃったりするのはこまる、みたいなせめぎあいがあるわけです。
そういうわけで、「自然の持つ毒」(食べる毒)について、調べてみました。
食中毒に関与する動物性自然毒はすべて魚貝類由来であると考えてよい。
へぇ〜。そうなんだ。主に魚介類、植物、きのこ類の毒について、中毒例、原因化合物、分析方法等よくまとめられています。「ウナギの生血を1リットル飲むと死ぬ(かも)」「アワビを食べて光過敏症に」のようなレアな中毒も。これを見ると、素人がよくわからずに魚や貝を採って食べるのも結構リスクがあるなあと思ってしまいます。他にも、あじさいなど身近な植物の毒も。
- 誤食しやすい山菜とキノコ 山形衛生研究所
きのこ狩り、山菜採りでの食中毒例は毎年のように報告されていますね。こちらでは、食べられる種と、それによく似た有毒種の比較写真などが見られます。
- 食用のキノコと見分け方が難しい。特に生長段階で形態が大きく変化するものもあるので、見分けるには経験が必要である。
- 煮ても焼いても毒がなくならないものが多い。
- 言い伝え、迷信を信じてはいけない(例 ナスと一緒に料理すると食べられる)。
- キノコは食、不食、食不適、食であるが生食は毒、多量に食べれば中毒、死に至る中毒などの場合があり、これらのことを理解するには、かなりの知識が必要である。
- 毒抜き、塩蔵など前処理が必要なものがあり、食習慣(調理を含めて)の違いで知識がないと中毒を起こすことがある。
うーん、野生のきのこを採って食べるのにはかなりの知識が必要なようですね。
潮干狩りにも危険はあります。二枚貝が有害プランクトンを食べることによって体内に蓄積した貝毒で、下痢や麻痺症状を起こすことがあるそうです。各地の自治体や水産技術系の研究所が貝毒監視情報を出しているようなので、潮干狩り前にはチェクが必要です。
- カビとカビ毒 東京都保健福祉局
カビ毒は、通常の調理ではほとんど分解しないそうです。カビた食品には注意。このサイト、カビ写真満載でちょっとこわいですとても参考になります。
主にじゃがいものソラニンについて。小学校でじゃがいもを栽培してクラスのみんなで食べて中毒する例が時々あります。
- ぎんなんの食べ過ぎは毒? 東京ガス:食の生活110番Q&A
中毒が起きる量の目安:大人40粒、子供7粒。子供のころ、ぎんなん大好きでいくらでも食べたーいなんて思ってましたが危険だったのですね。
最後にwikipedia。概要のところに、poisonとtoxin、venomという単語の説明があります。それぞれ、毒全般、生物由来の毒、昆虫を含む動物由来の毒を指すとか。自然も毒を持っている、からだに優しくない自然もあるってことは、昔の人々にとってはあたりまえのことだったのですよね。先人が長い時間をかけ、命がけで「これ食べたら危ないよ」知識を蓄積してくれ、そのおかげで今、私たちは一応「自然にある毒」に怯えず「なんとなく安心」して毎日の食事を摂ることができているのだということを忘れたくないです。