ひまわりレメディエーションについての覚書
農地土壌の放射性物質除去技術(除染技術)について
農林水産省プレスリリース
上記のプレスリリースを受けて、ひまわりを用いた放射性Cs除去についての話題がまた持ち上がっている。
その中に、「これってそもそもどう広まったの?」という発言をいくつか見かけたので、当初なんとなくではあるが追っていた者としてメモを残しておく。
放射能除去に効果を発揮する植物、「ヒマワリ」
あきる野市青年会議所
そもそも、震災直後の3/20のこのニュースが発端となったようだ。
ネタ元をたどると「世界一受けたい授業」が出てくる。
その内容はこちら(「放射能除去に効果を発揮する「ヒマワリ」雑学情報)で見ることができる。
そして、これとは別系統かと思われる情報元もあった。
ただし、日付はあきる野市の直後である。
ヒマワリが放射能汚染を20日で95%除去(露)
ゆかしメディア
こちらは、元ネタが特命リサーチ200X で、その内容はこちら(「ヒマワリはコスモクリーナーDか?」光と影)で見ることができる。
twitter上でも、3/21から情報拡散されていった模様である。
こう行った動きを受けて、すぐにその「暴走」に警鐘を鳴らし、拡散阻止に動く人も現れている。それが以下のブログである。
原子炉事故とヒマワリ
呼吸発電
前述の、テレビを元とした情報に「お墨付き」を与えていたようなのが、次の資料だ。
寒地土木研究所月報�646 2007年3月号解説「ファイトレメディエーション(植物を用いた地盤の浄化法)について
独立行政法人土木研究所 寒地土木研究所
寒地土木研究所の月報で、土壌の浄化の話題のなかにひまわりによる放射性Cs吸収の話がでていたのだ。
ただし、呼吸発電さんからの指摘を受けて現在は以下のような注意書きが掲載されている。
「上記の5種類以外にも放射性物質を吸収する能力も研究されている例があり、それによるとヒマワリの根を用いた水耕栽培試験によりセシウム、ストロンチウムを蓄積することが判明した内容である。」
紹介した事例は、放射性物質を水溶液から吸収して植物体内に蓄積されるものであり、放射性物質を消滅させるものではありません。空気中や根の届かない範囲の放射性物質に対する効果は期待できませんし、全ての放射性物質に効果があるかどうかも不明です。また、土壌の浄化には、植物の除去・運搬などの処理を行う必要があります。植物を植えたから問題が解決するというものではなく、その処理まで含めた対応が必要であることに御留意いただきますようお願いします。
本解説を引用された方々にお詫び致します。
以上のように、3つの主なネタ元から、各種ニュースサイト→twitter/2ch→まとめブログというように広がっていったと記憶している*1
情報拡散と共に、いろいろな批判もなされたが、「ひまわり=復興の象徴」というキャッチーさにはかなわず、こちらはなかなか広まって行かなかった。
結局、「ひまわりは、セシウムを吸収する」という情報はどんどんひとり歩きを続けていったのだ。
ひまわりで放射能は「吸収」されますが「除去」はできません。
togetter
togetterで、早い時期からなされていた批判。
「ひまわりの始末はどーすんだ」というもの。
6/12 ヒマワリが土壌の放射性セシウムを除去という説の真偽を確認しました。
3.11東日本大震災後の日本
特命リサーチの方の元ネタではないかとして、寒地土木研究所の月報でも引用されたDusenkovの論文を検証したブログがこちら。
この論文が、「水耕栽培で、水からのCs除去」のデータであって土壌からのCs除去のデータではないこと、また別の論文から、土壌からのCs除去にはひまわりは有効とは言えないことが示されている。
以下は資料として。
Plant uptake of radiocaesium: a review of mechanisms, regulation and application
J. Exp. Bot. (2000) 51 (351): 1635-1645.
参考として、こちらは海外の植物の放射性セシウム吸収に関する研究のレビュー。
植物がCsを吸収するメカニズム、Kイオンとの関係、植物体内の局在などのデータがまとめられている。
ファイトレメディエーションの項もあり、200種の植物を比較して、アマランサスの仲間の成績が良かったこと、ファイトレメディエーションの問題は時間がかかりすぎることと、放射性セシウムの蓄積した植物体の処理であることなどの記載がある。
Hyperaccumulators table – 3
wikipedia
英語版wikipediaに、放射性セシウム蓄積植物のデータがいろいろまとめられている。
ヒマワリで放射能除去? (東日本大震災)
デマ (東日本大震災) - Skeptic's Wiki
9/16追記
呼吸発電さんによる誤情報拡散阻止の動きが分かりにくいとの指摘を受け、明確になるよう加筆修正しました。
*1:記憶違い、震災後さらに早い出典があれば情報をお待ちしています