それは奇形じゃなく病気です

奇形動植物のまとめ ー院長の独り言

福島原発事故由来の放射能のせいではないか、と続々と「奇形」が報告されている。

中にはいくつか、素人目にもそれは違うだろ、というのがあったのでメモとして。
イチョウの切れ込みや徒長したたんぽぽ、これは子供のころ外で遊んだことあれば誰でも見てるレベルだから置いておく。)

部分的に枯れたイチョウ 2011.7.30 都内

これは、こちらのサイト(ルーラル図書館 イチョウの病気)にある「イチョウすす斑病」と思われる。
Gonatobotryum sp.という微生物による病気である。
もちろん、実際には病原菌を単離できなければ断言できないが、かなり特徴的な病斑だ。

若芽の縮れたナンテン 2011.5.5 東京西荻窪

これは、「埼玉の農作物病害写真集」にも掲載の、ナンテンモザイク病だろう。
CMV(キュウリモザイクウイルス)というウイルスによる病気で、ナンテンはウイルス病にかかりやすい性質を持っている。
葉のモザイク状の病斑、糸状になった若い葉とこちらも典型的な病徴を呈している。
参考:浜口農園さんの「病虫害」のページ


また、本物の変異体に関しては、自然界でももちろんあるものなので、放射線の影響かどうかはその発生頻度を調べる必要があるだろう。

ひとつ言えるのは、植物は動物よりもだいぶ変異体が出やすいということだ。
だから注意深く観察してれば、そのへんにも変異体はいっぱいあるのに気づくだろう。
(なかには上記のモザイク病のように、病気のせいでヘンな形になってしまうこともある。)
また、「枝変わり」という、成長の途中で起こった体細胞変異が、そっから先の植物体に反映されて一部だけ違う色や形になってしまう現象もある。
植物ゲノムには「レトロトランスポゾン」という動きまわる遺伝子が多量に含まれて、これが斑入りを起こしたり、大胆な変異を起こす原因になったりもするのだ。